コーチングの手法を取り入れよう。実践時の注意点と心得

「コーチング」というと、スポーツや教育業界で取り入れられるイメージがありますが、ビジネスの現場においても活用できる手法です。社員や部下のモチベーションを高め、目標達成に向けたサポート方法として役立てられます。しかし、コーチングを実際に取り入れる際、どのような考え方で行えばよいのかは、意外に知られていないかもしれません。人材育成に役立つコーチングとは何か、またティーチングとの違いについてお伝えします。

コーチングとは何か

コーチングとは、対話によって相手が本来持っている力を引き出しながら、自発的な行動を促し目標達成を支援する、コミュニケーションスキルです。スポーツや教育の現場でも、個人の目標達成のためにコーチングを行う人材が配置されるケースがありますが、オフィスワークにおいても、スタッフの力を引き出す手段のひとつになりえます。

コーチングの目的

コーチングの目的は、「目標の達成を促進させること」にあります。単に目標を達成させるだけでなく、相手が自分で答えを見つけ出すのをサポートするのが特徴で、「誰でも自分自身で答えを見つける能力をもっている」という考えのもとに行われるのです。

コーチングの3原則

一般に、コーチングには次の3原則があるとされています。

  1. インタラクティブ(双方向性)
    一方的なコミュニケーションにとどめず、相手に質問し、その質問への答え方を見ながら、共感したり、関連する質問をしたりして、相手が自分で答えにたどりつけるようにサポートします。

  2. オンゴーイング (現在進行形)
    コーチングは一度きりでは高い効果を出せないことも多く、フォローアップ、フィードバックなどを入れながら継続的に行うことで、相手のパフォーマンスが高まることを期待します。

  3. テーラーメイド (個別対応)
    基本的に、コーチと対象は1:1の個別対応を行います。コーチングを受ける相手は、1人ひとりの価値観や思考パターンが異なることから、画一的な方法で対処するのではなく、相手に合わせたコミュニケーションを行うのが特徴です。

コーチングの手法

コーチングには、「GROW」というモデルがあります。これは、「GOAL(目標を明確化する)」、「REALITY(現実を把握する)」、「RESOURCE(リソースを見つける)」、「OPTIONS(選択肢を考える)」、「WILL(目標達成の意思を確認する)」という5つの要素から成り立つという発想から生まれたもので、それぞれ次のような例が挙げられます。

  • GOAL(目標を明確化する)
    例えば、店舗のマネージャーに今月の目標としている売上金額を聞き出します。具体的な答えが返ってきたら、「もう少し高い金額は目指せるか?」といった問いかけによって、さらに上の目標を導き出せるようにします。このとき「今月の売上金額は○○を超えるようにしましょう」などと、コーチングする側が一方的に決めてしまわないようにするのがポイント。

  • REALITY(現実を把握する)
    「先月の売上目標は○○でしたが、どうでしたか?」と質問し、理想と現実の間にどのくらいの開きがあるのかといった現状を把握します。

  • RESOURCE(リソースを見つける)
    目標を達成するためのリソースを相手に発見させます。例えば、人材や情報、時間など。

  • OPTIONS(選択肢を考える)
    ゴールを目指すための良いアイデアはないか質問し、常識にとらわれずにいろいろな案を出せるように導きます。

  • WILL(目標達成の意思を確認する)
    例えばマネージャーが、売上目標を達成するためのアイデアとして「スタッフの教育時間を増やす」という案を挙げてきたとします。その場合、いつから始めるのかと具体的な問いを投げかけ、先延ばしさせないようにします。

コーチングを行ううえでの注意点や心得

「答えを自分で見つけ出せるようにする」というコーチングの手法は、受け手が問題解決能力を身に付けやすいというメリットがあります。しかし、成果を出すためには次のような点に注意する必要があるでしょう。

  • コーチと相手との間に信頼関係が必要
    人間関係が構築されていない対象にコーチングを行ってしまうと、相手が疑心暗鬼になる可能性もあり、かえって状況が悪化することもありえます。

  • 相手には目標達成の意志が必要
    そもそもゴールに向かう意志がなければ、コーチングを使ったコミュニケーションを行っても、成果につながりません。

  • 他人への依存心の強い相手の場合は向かない
    コーチがなんとかしてくれると思ってしまうような依存心の強い対象は、コーチングによる問いを投げかけても、自分で答えを見つけ出そうとしない可能性があります。

コーチングとティーチングの違い

相手を目標に向かって導く手法としては、コーチングのほかに「ティーチング」もあります。このふたつは混同されがちですが、次のような違いがあります。

  1. ティーチング
    • 知識や技術などを相手に伝える。やり方を教える。
    • コミュニケーションは基本的に一方通行。
    • 基本的なことを伝授するときや、大人数を相手にスピーディーに教えたいとき、やり方を統一したいときなどに適している。
  2. コーチング
    • 一方的にやり方を伝えるのではなく、相手に問いかけることで、相手から答えを引き出すスタイル。
    • コミュニケーションは双方向。
    • 本人の自発的な行動をじっくり促したいとき、本人の個性を生かせる方法を導き出したいときなどに適している。

ティーチングとコーチングは一見似ていますが、それぞれ異なる手法が使われています。目標の内容や相手の性質などに合わせて、よりよい方法を選んでみましょう。

リラックスした雰囲気で実践しよう

コーチングを行う際は、相手の精神面が充実していない場合、目標達成を促しにくいケースがあります。プレッシャーを与えすぎず、リラックスしてもらえるような環境を整えたうえで、実践することが大切です。相手の様子を見ながら、柔軟に対応していきましょう。

 

参考:

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