ナレッジマネジメントで企業全体の生産性アップを目指そう

昨今のビジネス環境では、雇用形態の多様化、コミュニケーション手段の変化、業務のIT化など、多くの変革の波が訪れています。こうした複雑な環境下で生産性を上げるためのヒントとなるのが、「ナレッジマネジメント」の発想です。ナレッジマネジメント導入のメリットやポイント、成功例と失敗例などをお伝えします。

ナレッジマネジメントとは

ナレッジマネジメントは、1990年代に経営学者の野中郁次郎氏が「知識経営」を提唱したことに端を発した経営手法です。具体的には、個人が持っている情報・知識などを組織全体で共有、活用できるように管理することを指します。またITを活用し、こうした情報をデータベース化して共有することをナレッジマネジメントと呼ぶ場合もあります。

ナレッジマネジメントが注目されるようになった背景には、ビジネス環境におけるさまざまな変化があります。人事面では、雇用形態の多様化や人材難などの課題があることから、業務を速やかに引き継いだり、他者と仕事をシェアしたりする必要性がますます高まっています。また、近年ではビジネス全般におけるIT技術の導入によってあらゆる業務の効率化が進み、より速やかな処理が求められるようになっていることも挙げられるでしょう。今後AIの導入が本格的に進めば、ますますその傾向は顕著になると考えられます。

こうしたなか、暗黙知(個人がこれまでの経験から得た知識)を形式知(文章や図などによって表現できる知識)へと変えることで、業務のノウハウを迅速に共有する仕組みが必要とされるようになりました。そうした仕組みをつくることで、企業全体の生産性向上を目指そうというわけです。これがすなわち、ナレッジマネジメントの発想です。

ナレッジマネジメントを導入するには

では実際にナレッジマネジメントを導入するには、どのようにすればよいのでしょうか。導入の手順をメリットやポイントとあわせて見ていきましょう。

導入の手順

  1. 課題の洗い出し、導入プランの立案
    まずは、業務上どのような課題があり、どんな情報を共有すべきかを検討します。このとき、どういった既存ツールを利用できるか、あるいは、社内で新たにシステムを構築するかといった点をふまえて導入プランを立てる必要があるでしょう。代表的なツールの種類には、グループウエアやオンラインストレージ、エンタープライズサーチのほか、CRM(顧客管理システム)、SFA(営業支援システム)などが挙げられます。
  2. 導入
    1で提案されたプランにあわせて、ツールやシステムを導入します。ツールやシステムの規模によっては、先に一部で試験的に導入するなど、できるだけ混乱を防ぐ方法で実行します。
  3. フィードバック、見直し、改善
    導入したツール、システムに対して従業員からフィードバックをもらい、必要に応じて見直し、改善を図ります。

導入のメリット

ナレッジマネジメントの導入によって、組織内の暗黙知が形式知に変わると、次のようなメリットが期待できます。

  1. 業務のスピードが向上する
    例えば、知識が個人の中にとどまっている状態(暗黙知)のままでは、業務を引き継いだりシェアしたりする際に、時間がかかりがちです。知識やノウハウを明文化(形式知)し、いつでもそれを引き出せる状態にしておけば、組織内で迅速な引継ぎやシェア、情報共有が可能になり、全社的な生産性向上が期待できます。

  2. 研修の準備がしやすくなる
    個人が持っている知識や情報を普段からデータ化しておくことで、新入社員や中堅社員の研修を行う際の資料づくりにかかる労力を軽減できます。

  3. より良いサービスの提供が可能になる
    営業部門やカスタマーサービス部門が得た顧客情報(要望や苦情など)を全社的に共有することで、より優れたサービスの創出が可能になり、顧客満足度アップにつながります。

導入時、導入後のポイント

導入時、導入後には、次のような点に注意しましょう。

  1. 従業員の使い勝手を重視する
  2. データ入力作業などのタスクが従業員の負担になりすぎないようにする
  3. 定期的にシステムやツールを見直して、必要な改善策を施す

せっかく導入しても、活用開始までに手間がかかったり、入力に負担を感じたりするようであれば、結果的に継続しづらくなる可能性があります。作業する立場の操作性を理解したうえでの導入が理想的です。また、より良い仕組みを構築できるよう、定期的なチェックを行いましょう。

失敗しないための注意点

ナレッジマネジメントは、うまく導入すれば従業員の士気向上や生産性向上につながりますが、場合によっては反対に効果が得られないケースもあります。

従業員にとって使い勝手の良くないシステムを導入してしまう、自分の持っている知識を共有したがらない人が出てきてしまうなどの場合です。このような場合、うまく活用できないままコストだけがかかってしまうという失敗例に終わってしまうかもしれません。

例えば、製品開発において技術者と他部門の従業員との意見交換ができるシステムをつくります。このとき、開発段階の早期から多くの人に関わってもらうような仕組みづくりができれば、導入成功といえるでしょう。失敗に終わらせないためには、システムの操作性に留意し、ナレッジマネジメントのメリットを従業員に十分に説明する必要があるでしょう。

新たなアイデアが生まれる可能性も

ナレッジマネジメントによって、多くの情報を組織内で共有できれば、互いに新たなアイデアを出し合える可能性も出てきます。そうした状況は企業の活性化につながります。新たに生まれたアイデアもナレッジマネジメントで共有しながら、さらにアイデアを積み重ねていく……という好循環が生まれるでしょう。より良い仕組みを選択しながら、ナレッジマネジメントを成功させ、生産性を高めていきたいものです。

 

参考:

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