いざ導入⁉その前に考えたいCRM導入の注意点

CRM(Customer Relationship Management)という言葉には魅力があります。導入することで顧客との関係が強固になり、売上も右肩上がりになるイメージがあります。もちろんCRMはライフタイムバリュー(1人の顧客が企業にもたらす価値)の向上による売上増が最終的な目的ですが、そこにばかりに目が奪われると「こんなはずではなかった」となりかねません。CRM導入における注意点を見てみましょう。

CRM導入失敗の要因

CRMの本来の役割、機能、その存在価値について十分理解していないことから誤解が生じることが多いと言えるでしょう。整理してみましょう。

CRM本来の特性を考える

CRMを導入すればすぐにでも売上の上昇につながるかというと、そうでもありません。そこまでにはいくつかの段階を経ることになります。

まずそのファーストステップは、「顧客を知る(見える化)」です。どの企業にも顧客リストがあって、住所、氏名などの個人情報のほか、商品の購入時期や金額が記録されています。それだけは不十分で、CRMではダイレクトメールの発信記録とその問い合わせなどの記録、営業スタッフが電話や訪問をしたときの応対履歴などが残されます。ここで重要なことはこれらの情報が共有されるということです。コンタクトセンターへの問合わせが些細なものであっても担当営業マンに引き継がれ、顧客へ連絡が入れられる体制などです。必要ならばそれをサービス担当に廻し、しかるべき措置が講じられることです。当たり前の対応のようではありますが、これをシームレスに実施するには、CRMという情報共有の仕組みがないと、対応が数日遅れたり、忘れてしまったりすることがあるわけです。

例えば、コンタクトセンターに問合わせしたとき、その履歴から以前の問い合わせ内容の続きとして淀みなく対応できたり、つい最近の購入についてのお礼を先に口にしたりすることで、顧客は自分が大切にされていると感じます。これらのつみ重ねで顧客はその会社へのロイヤリティを高めます。その結果、関連製品を購入し、他社の製品やサービスに乗り換えるのを控え、口コミなどで評判を広げてくれることになるわけです。ここまで到達してCRMの成果と言えます。

CRM失敗事例

これからもわかるとおり、CRMという"システムありき"ではないわけです。失敗する要因は次に集約できます。

  • 明確な目的がなく導入(顧客戦略なしの導入)
  • 社員の理解不足、活用スキル不足
  • データに関する認識不足(データ不足、過剰記録、誤った運用)
  • 経営者や関連部署の理解不足(意識の不統一)

何の目的で顧客の応対記録を残すのか、その共有で、どんな価値を顧客に提供するのか、経営上の位置づけとして、全社で取り組むべきという意識の強さなどがとても重要です。コンタクトセンターの問い合わせ情報が、CRM上で記録されていても、営業やサービスで有効に活用されないなどの事態に陥ることになります。

2.CRM導入における注意点

CRMの導入時に注意点、うまく導入するその方法は失敗例の"裏返し"になります。

  • 管理者・リーダーを決める:社内のCRMの状況を把握し、意思決定の裁量を持ち、経営層と連係する。
  • 導入時期、スケジュールを決める:導入、啓蒙、運用、評価など段階と期間を定める。
  • 目標と優先度を決める:過剰な情報の取得は作業を増やすことに。重要かつすぐできることから実行していく。
  • 会社や商品、顧客対応の思想や特性にあったシステムを選ぶ:扱い商材や会社の体制なども考慮する。
  • IT知識(自社の技術力)について確認:社員の足並みをそろえるため、自社運用と外注の切り分けポイント等の把握のため。

中でも「管理者・リーダーを決める」は重要であり、経営層の理解、承認を得ることで思い切った改革も進められる環境が整います。

3.CRM導入の実際

さて、もう少しCRMの実際の導入や運用について掘り下げてみましょう。

CRMは顧客を知り、今後を考える機会

CRMは顧客の「見える化」を実現し、データを分析することでわからなかったこと、誤解していたことが明らかになります。ベテラン社員の経験や顧客対応例は貴重な資産ですが、必ずしも現状に合ったスタイルではないかもしれません。今の顧客の声を拾い、製品やサービスに反映させてこそCRMの価値です。今後の商材の開発や、顧客対応を考える機会として、これまでのスタイルを進化させることが大切なのです。CRMを導入しても、営業やサービスが従来の慣習のままでは意味がありません。CRMの導入は改革のチャンスでもあるのです。

関連部署、関連パートナー企業、その他業務との連係

営業が迅速で丁寧な対応をしても、系列パートナー企業のサービスが遅れたり、経理部門の請求書の作成や支払い方法などが不親切のままだったりしては、CRM導入の効果は十分に発揮されません。会社のトップはもちろん、社員の一人ひとりがCRMを意識することが大切です。

作業の全体、作業量の把握、情報の過不足に注意

CRM導入における注意点で述べたこととも関連しますが、例えば顧客応対の記録など、どこまでを残すか、またどのようなデータの持ち方と共有の仕方にするかも考えながら進めるようになります。CRMを導入することで、仕事ばかりが増え、その効果が現れないようでは本末転倒です。過剰なサービスも自社と顧客の双方が疲弊してしまう危険があります。また部署によっても作業の負担が異なることがあるので、管理者が適正に割り振るなどが必要でしょう。

経営者トップからの理解と連係

全社事業であるかどうか、社員の意識が統一できるかどうかは、経営トップからのメッセージ次第であることが往々にしてあります。同時にトップは、CRMから顧客の今を正確に知るという姿勢も大切です。社員からの報告のみに頼らず、記録された顧客の声や分析結果は、会社の将来にも関係してくるという意識が重要です。

短期ではなく長期視点

冒頭述べたとおり、CRMは段階を経て実現し、効果を得るものです。短期的な視点ではなく、長期的に視野と思考にもとづいて行っていきたいものです。それには会社の事業方針や商材の方向性も関係してきます。CRMは会社や事業の将来を知るひとつの手段でもあるのです。

トライアンドエラー、DIY的な発想

考え抜いても先が読めないことがあります。CRMも運用しながら試行錯誤し、少しずつ自社の目的にかなったシステムやルールに作り替えていくことが大切です。当初の計画にこだわるより、軌道修正して正しい結果を導き出すほうがCRMの効果も早く得られることになるでしょう。

外部アドバイザーやパートナーを確保

CRMはITシステムのひとつですが、ITテクノロジーに限らず、CRMの運営について経験のある外部のサービス企業の力を借りるのもひとつです。具体的にはコンサルティングや、例えば顧客対応部門が手薄のようならばアウトソーシングでコンタクトセンター部門を強化するなどです。24時間対応や休日対応を考える場合、CRMの自動問合わせフォームを活用するほか、アウトソーシングにより切り分ける方法もあります。顧客満足度を高める上で、商品の発送のリードタイムを短くする必要があると判明したら、パートナー企業に交渉したり会社を変えたりすることにも取り組むケースもあるでしょう。自社ですべてを完結しようとしないことも、CRMを成功させるポイントのひとつです。

リーダーの存在

くり返しになりますが、CRMのようなシステムはその導入効果がすぐに目に見えるものではないので、着実に進めていく姿勢が重要です。そのけん引役となるのがリーダーの存在で、経営層との情報の橋渡し役、ほかの部署への教育や指導、社外のパートナーとの連係の監督などを務めます。その意味ではリーダーは、強い意思と研究心と、コミュニケーション能力が求められるかもしれません。

関連記事