クラウドで加速する国内CRM市場の規模拡大を考える

「CRM(Customer Relationship Management)は一時のブームだった」と当時を振り返る人もいると思います。たしかに導入機運だけが高まった時期がありました。当時はオープンソースという考え方が根付いてなく、また、クラウドコンピューティングもありませんでした。この2つが現在はキーポイントとなってCRM市場は拡大しています。その意味するものが何なのか、顧客に商品やサービスを提供する企業ならば一度考えてみる必要があります。

現在に至るまでのCRM

まずは過去のCRM市場の移り変わりを簡単に振り返ってみましょう。

90年代 CRMブームの到来

1990年代、米国で注目されたCRMの概念は、日本でも導入機運を高めることになりました。高いものでは数十億円以上の導入費となったシステムは統合型というすべての機能を網羅したようなものでしたが、その多くが望ましい成果を見ることがなかったという評価もあります。

専門特化したツールの発達、導入へ

2000年代になり、SFA(営業支援システム)が口火を切るように、わかりやすく機能が特定の目的に限定されたものが登場します。メール配信やコールセンター向けのテレマーケティングの運用システムなどです。それぞれ現場や業務を支援する役割で活躍します。

現在のCRM

パソコンとブロードバンドの普及、さらにスマートフォンが加わり、人々の情報選択、申込や購入のチャネルがインターネットへシフトしていきました。実店舗とネットショップやコールセンター間での情報共有が求められるようになり、マルチチャネル(複数の販売チャネル)に続くオムニチャネル(実店舗とネット店舗の連携)が注目されることになります。実店舗の接客や郵送のメールに加え、ネットショップでの販売やメール・マーケティングの比重が高まり、このデジタルマーケティングを効果的に実施するには、その結果を一元管理できるCRMシステムが必要になってきたわけです。

CRMの市場動向

では、その市場規模の推移はどうなのでしょうか。市場は売上の総体なので、成長しているということはCRMシステムの利用者が増加していることを意味します。調査会社によると、2016年からの年間の平均成長率は5%で、2021年の市場規模は1,195億3,000万円に達するとされます。デジタルマーケティングやマーケティングの自動化がその需要の背景にあるとしています(IDC Japan)。

クラウド化と導入チャンス

別の調査会社によると、2021年にはクラウド型のCRMの売上が5割に達するとされます(ミック経済研究所)。CRMの歴史を振り返ると、90年代は大型システムのため導入企業が限られていたものが、2000年代には機能特化型で導入がしやすくなり、現在はクラウド型でさらにCRMを利用しやすい環境が整ってきたと見ることもできます。

CRM格差に注意

CRMは顧客のロイヤリティを高めるという他社との差別化の手段のひとつです。あくまでも可能性の話ですが、CRMが利用しやすくなることで、積極的に活用した企業が顧客対応では一歩リードすることが予想できます。クラウド型で大手企業に限らず中堅中小規模の企業も導入しやすくなったため、これまでのような大手企業との知名度や集客力の格差ではなく、同規模の同業者とのCRM格差のようなものが生じてもおかしくないかもしれません。

CRMの将来性

顧客とのよりよいリレーションを築き、LTV(ライフタイムバリュー:1人の顧客が企業にもたらす価値)を高めるのがCRMの狙いです。そして今後はほかのシステムとの融合もポイントになるでしょう。

SFAやBIとの連係、AIやビッグデータの活用

SFA(営業支援システム)との連動はすでに行われています。CRMの顧客やマーケティング情報が企業の事業戦略についても示唆に富むデータになる可能性があるという意味では、BIツール(企業に蓄積された有用なデータを収集して分析する)の要素も重要になってきます。ビッグデータテクノロジーで顧客に販売した商品の利用情報がつかめれば、CRMの顧客情報と使用歴や故障歴のデータとのリンクがはかれ、買い替え時期を正確に知ることができるかもしれません。コールセンターへの問い合わせの音声データをAIが自動的に要約して分類し、新製品の問い合わせ内容からポジティブな潜在顧客かどうかを判定した上でCRMのデータベースに書き加えられるようになるかもしれません。

CRMによるデータベースマーケティングが標準に

CRM格差の可能性を述べましたが、製品ひとつひとつの情報であるビッグデータまで扱うようになれば、会社の事業そのもの将来を見据えるためのデータベースに発展していくことも予想できます。重要なことは、勘や経験のみに頼った営業や商材の開発の時代は終わるということです。限られた経営資源で最大の効果を発揮するには、現状をデータ化して分析し、次のアクションを決めることです。CRMはそのような時代、理にかなったシステムに進化していくということです。

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