【事例インタビューNo.2(前編)】お客様満足度の高いコンタクトセンターに必要な「サービスを科学する」方法とは?

WOWOWコミュニケーションズが提供するコンタクトセンターサービスの強みは、これまで経験や直感に頼っていたサービスを科学的に分析する「サービスサイエンス」を軸にした応対品質の高さにあります。今回は品質調査やコンサルティング、人材育成などを展開するWOWOWコミュニケーションズ経営戦略部の小川範芳担当部長とWOWCOM Collegeの下幸代さん、渡辺菜月さんの3名に、「サービスを科学する」方法について聞きました。

お客様の「困りごとは何か」を一緒に考える

――いつでもどこでも商品を購入してもらえるように、あらゆるチャネルでお客様と接点をもつ「オムニチャネル戦略」を実施したいと考える企業が増えていると思います。こうしたオムニチャネル時代に求められるコンタクトセンターの役割とはどういうものですか。

小川 「お客様がコンタクトセンターへ問い合わせる経路は、電話、チャット、電子メールなど多岐に及びます。インターネットを通じて問い合わせをするお客様の場合、内容が明確な傾向にあります。おそらく、自分が解決したい課題や求めるサービスなどを、あらかじめネットで検索して、ある程度自己解決したうえでアクセスしてくるからでしょう。そのため、センター側が提示する回答は大抵1つで済みます。

一方で、電話から問い合わせてきたお客様は、自身が抱えている問題をうまく表現できなかったり、そもそも何が問題なのかが自覚できていなかったりすることがあります。なかには『とにかく1から10まですべて教えてほしい』という方もいます。こういったお客様に回答する際は、抱えている問題の本質を、一緒に解きほぐしていく作業が重要になります。

つまり、同じ問い合わせでも、チャネルごとに性質が異なるのです。お客様が事前に持っている期待が何なのかを察知し、対応方法を柔軟に使い分けることこそが、これからのコンタクトセンターに求められる役割だといえます」

――WOWOWコミュニケーションズが質の高いサービスを提供できる理由は何でしょう?

小川 「親会社である衛星放送事業者WOWOWのカスタマーサポートを長年手がけてきたのが大きいでしょう。2007年にはWOWCOM Collegeという組織を社内に立ち上げ、品質向上を目的とした社内人材育成に力を入れてきました。そこで培った高品質なコミュニケーションサービスをクライアントに提供しています。

 また、『サービスサイエンス』と呼ばれる理論を取り入れているのも、当社の特長の一つです。問い合わせチャネル以外にも、住んでいる場所から性格まで、お客様のタイプは千差万別。そうしたなかで、勘やセンスに頼らずに、理論に基づいてお客様を理解し、それぞれのタイプに合わせたサービスを提供しています」

お客様が抱く期待に答えるのが「サービス」

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――「サービスサイエンス」について、詳しく教えていただけますか。

小川 「サービスサイエンスについて理解するには、まず『サービス』という言葉の定義をはっきりさせる必要があります。というのも、日本語としての『サービス』は捉え方がばらばらで、『良いサービス』『悪いサービス』と聞いて頭の中に描くものも人それぞれだからです」

――「サービス」というぼんやりした概念に明確な定義付けを行うということでしょうか。

小川 「そうです。弊社では、『サービス』の定義を、人や構造物(システムやコンタクトセンター)が発揮する機能で、なおかつお客様が事前に抱いている期待(以下、事前期待)に合致するものと定めました。さらに、お客様の持つ事前期待を『共通的』『個別的』『状況で変化するもの』『潜在的』の大きく4つに分類しています。それぞれの内容と、重要なポイントは次のとおりです。

1.共通的な事前期待

正しい言葉遣いや定型的な質問への受け答えなど、オペレーターであればできて当たり前のサービスのこと。マニュアルやルールがあれば全員が同じようにできることがポイント。

2.個別的な事前期待

お客様一人ひとりに合ったサービスを提供すること。お客様の行動や嗜好(しこう)性などを記録・分析して、適切に対応することがポイント。

3.状況で変化する事前期待

会話の中で常に変化していくお客様の期待を察知し、価値のあるサービスを提供すること。状況を察知する観察力や想像力がポイント

4.潜在的な事前期待

お客様の想定を超えて感動を与えるサービスを提供すること。お客様に感動を与えた過去のケースから学び、ノウハウとして蓄積することがポイント

1〜3を押さえることができれば、質の高いサービスを提供できていると言えるでしょう。これに加えて、4つめの『潜在的な事前期待』に応えることができればパーフェクトです」

――お客様の事前期待を知るためにはどうしたら良いのでしょうか?

小川 「事前期待それ自体についてお客様が口に出すことはありません。そこで、言葉以外の要素から読み取ることになります。住んでいる地域や文化圏、外から携帯電話でかけているのか、落ち着いた環境からの問い合わせなのかなど、あらゆる状況を受話器越しでくみ取って、最適な対応をすることが大切です。

 例えば、せっかちな口ぶりで話すお客様には、テンポよく必要な部分だけ説明して欲しいという事前期待が読み取れます。一方で、質問内容がまとまっておらず、会話自体が好きなタイプのお客様には、あえて聞き手に回って共感を示す必要があるでしょう。このような対応を可能にするためには、お客様についての情報の整備も必要ですね。

 サービスを受ける側と提供する側とで、『理想のサービス』の捉え方が異なっている場合、問題が発生してしまいます。それを未然に回避するために、感覚的に捉えられることが多い『サービス』を、科学的な視点でわかりやすく分類して、見える化し、対応手法を整え、誰でも適切に対応できるようにする。これが、当社で実施している『サービスサイエンス』に基づいた品質管理なのです」

個人のオペレーターではなく、センターの仕組みそのものを改善する

――「サービスサイエンス」を活用して、コンタクトセンターの品質を高めるためのコンサルティングサービスを提供していますね。

小川 「コンタクトセンターの品質を高めるために、部分的なサービスだけでなく、トータルでのソリューションを提供しています。コンタクトセンターの現状調査から課題抽出、課題解決策のプランニング、施策の実施とその検証まで、PDCAをクライアントとともに行います」

――具体的には、どのようなことを行っているのでしょうか?

下 「電話応対の音声データを聞いて、オペレーターの課題を抽出したり、『スーパーバイザー』と呼ばれるセンターの運営管理者が、与えられた役目をしっかり果たせているかを調査したりします。コンタクトセンターの課題というと、個々のオペレーターのマナーやマインドなどを問題視してしまいがちですが、実際にはセンターの仕組みづくりに問題があるケースが多いのです。

 例えば、お客様からの問い合わせに回答する時間が、必要以上に長くかかっているケースを考えてみましょう。回答のための情報を検索して探し出すのに手間取っていることがわかったとして、それが特定のオペレーターだけの現象であれば、個人の力量が問題である可能性が高いです。しかし、複数のオペレーターが同じように検索に時間をかけているなら、情報を探し出す仕組み自体を改善しなければなりません。そうであれば、スーパーバイザーには、日々の業務に忙殺されるのではなく、検索の仕組みが整備されているか、情報が更新されているかまで、しっかり目配りするよう指示を出します」

――コンタクトセンターを担う人材には、本質的な課題を見抜く能力が求められるのですね。

小川 「重要なのは、お客様視点のソリューションを提供できているかどうかです。事前期待をしっかり読み取ったうえで、それに応えることができれば『良いサービス』と評価できるし、そうでなければ『悪いサービス』と評価されても仕方がありません。

 コンタクトセンターを担う人材には、最初からこうした資質が備わっているわけではありません。当社では、クライアントのコンタクトセンターが『良いサービス』を提供できるように、コンサルティングだけでなく研修などのトレーニングも実施しています。サービスサイエンスの理論を組み入れて研修プログラムを設計しているので、個人の力量に頼らず、誰もが確実に習得できるスキルを提供しています。」

――ありがとうございます。後半では、研修プログラムについて詳しく聞いていきたいと思います。

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