【事例インタビューNo.2(後編)】育てる人材を育てることが、サービスの質を高める最も効果的な方法

WOWOWコミュニケーションズは、コンタクトセンターを支える人材の育成にも力を入れています。長年の試行錯誤の結果、「育てる人材を育てる」トレーナーや、センターを運営管理するスーパーバイザーの質を高めることが、最も効果のある手段であると気づいたそうです。それは、具体的にはどういうことなのでしょうか? 前半に引き続き、WOWOWコミュニケーションズ経営戦略部の小川範芳担当部長とWOWCOM Collegeの下幸代さん、渡辺菜月さんにセンターを担う人材育成のノウハウについて聞きました。

応対品質だけでなく、事業の根幹を踏まえた研修プログラムを提供

――WOWOWコミュニケーションズが提供している人材育成プログラムとはどのようなものなのでしょうか。

小川 「親会社の衛星放送事業者WOWOWのカスタマーサポートを手がけるなかで、成果が出たものだけをクライアントに提供しようという思いで設計したサービスです。そのため、結果に結びつくトレーニングプログラムを提供できていると考えます。

 研修を提供している他の企業は、コスト削減や24時間サービスの提供などで競争力を高めようとします。ですがWOWOWコミュニケーションズでは、クライアントの事業の根幹を踏まえて、研修プログラムを設計しています。やや人間臭い言い方をすれば、汗と涙で築いた、結果を出せるプログラムであると自負しています

 具体的には、『モニタリング研修』『コーチング研修』『おもてなしの心研修』『サービススローガン研修』『クレーム研修』というメニューを用意しています。」

――順番に聞いていきたいと思います。まず、「モニタリング研修」について教えてください。

下 「モニタリング研修は、コンタクトセンターを管理運営するスーパーバイザー向けの研修です。単なる応対品質ではなく、業務フロー、商品、システム、マネジメントといった『品質を構成する要素』にまで目を向けた原因分析力を養います。

 具体的には、電話応対の音声を聞いてもらったうえで、センターで起こっている課題を発見します。重要なのは、オペレーター個人の課題よりも、センター全体で何が起こっているのかを把握するのがスーパーバイザーの仕事であるという点です。スーパーバイザーの方には、何が課題なのか、それを解決するためにはどういう方法があるのか、仮説を立てて、WOWOWコミュニケーションズの認定トレーナーと一緒に考えていただきます。電話応対の音声評価をするだけではなく、コンタクトセンターのマネジメントにどう生かすのかを考えてもらうことが大切なのです」

認定トレーナーが現地に出向き、コーチング技術の手本を示す

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――つぎに、コーチング研修について教えてください。

下 「コンタクトセンターを運営するうえで、コミュニケーターやオペレーターと呼ばれる、日々じかにお客様と接するスタッフに、スーパーバイザーがどう関わっているかはとても重要です。そこで、人材育成で効果的な手段となる『コーチング』が必要であると考えました。相手の話をよく聞き、相手から答えを導き出すことがコーチングの基本です」

――具体的にはどのような内容なのでしょうか?

小川 「コーチングの概要を説明する講義とともに、モニタリングを実施しています。クライアントの現場スタッフに対し、まずはWOWOWコミュニケーションズの認定トレーナーが直接フィードバックします。スーパーバイザーには、その様子を隣で見ていただきます。つまり、スーパーバイザーに対し、お手本を示すわけです。学んだテクニックをスキルとして血肉化するためには、この工程が欠かせないのです。その後、受講者であるスーパーバイザーが自らスタッフに改善点を指導してみます。それに対しても、当社の認定トレーナーは、良かった点や改善点などをフォローします」

――コーチングのやり方を、目の前で実践して見せるのですね。

下 「認定トレーナーが現場に出向き、手本まで示すプログラムは珍しいと思います。失敗すれば、プログラムの評価を下げてしまう恐れもあるだけに、プレッシャーもありますが、お客様から『ありがとう』と言っていただけることも多く、やりがいのある仕事です」

――つづいて、おもてなしの心研修とはどういったものでしょうか。

小川 「サービスにおいて必要な『心構え』を学ぶ研修です。当社では、サービスを提供するうえで最も大事なことは、心が養われていることであると考えています。たとえ語彙力や観察力が優れていて、サービスサイエンスの考え方を理解している優秀なコンタクトセンタースタッフであっても、心がなければ意味がありません。心技体が揃ってこそ、質の高いサービスとなるのです。

 逆に、力量やマナーが足りなかったとしても、一生懸命さが伝われば、お客様の満足度が高くなることもあります。お客様のために何とかしたいという気持ちが伝わるのが大切なのです」

――コンタクトセンターのスタッフに限らず、必要となりそうな内容ですね。

小川「おもてなしの心研修は、WOWOWコミュニケーションズに入社した社員全員が必ず最初に受ける研修です。会社の考え方や理念を一人ひとりに落とし込むことができるほか、心構えや姿勢を標準化することができます。クライアントに研修を提供する際も、トレーナーが自分自身のサービス体験をベースにして考えることがポイントです」

――「心構え」を学んだあと、どう業務に生かしていくのでしょうか。

下 「おもてなしの心研修の後に行うのが、お客様とのコミュニケーション研修です。おもてなしの気持ちや感謝の言葉をどう伝えるかというスキルを学びます。受講者同士でロールプレイングをしながら、自分が良いと思える応対を試すことができます」

お客様体験を通じ、自分たちがすべきサービスの本質を学ぶ

――それでは、「サービススローガン研修」とはどういうものですか。

下 「受講者にいろいろなコンタクトセンターに電話をかけたり、さまざまなサービスを受けたりすることにより、実際にお客様体験をしていただきます。お客様視点になることで、日ごろの自分の応対を見直すことができるのです。そしてお客様体験を終えた後、良かった点や改善点などについて、グループでディスカッションをします」

――自分を客観化することができそうです。「サービススローガン」とはどうつながるのでしょうか?

小川 「一般的に、企業のスローガン(経営理念)はトップダウンで決められます。決める側は試行錯誤し、さまざまな思いを込めているのですが、現場で活動するスタッフが、そのスローガンが決まるまでの背景を受け止めきれないと、スタッフにとっては聞きなれた陳腐な言葉の羅列になってしまいます。

 そこでサービススローガン研修では、受講者に、ディスカッションの中で自分が体験したことを踏まえて、サービススローガンを作成していただきます。コンタクトセンターやさまざまな顧客接点(チャネル)においてサービスがどうあるべきかを考え、自分自身の言葉を使って、ボトムアップで作成することで自分ごと化するのです。

 次のような事例があります。お客様が『そっけない応対と感じる』原因が、『質問した事柄にしか答えていなかったから』だとします。実際に電話をかけてお客様体験をした受講者は、『決して不満足ではないが、大きな満足も感じない』という感想を得ることになりました。こうした教訓から、受講者同士でディスカッション行い、『お客様への配慮』という言葉をサービススローガンに決めたのです。一見ありふれた普通の言葉ですが、実際にお客様体験をした受講者にとっては、この先、仕事をするうえで、非常に意味のあるスローガンとなります」

――「クレーム研修」はどのようなものですか。多くの企業が実施している研修だと思いますが。

下 「当社では、クレームはなぜ起こるのかまでさかのぼるために、まず『クレーム』の定義から考えます。大きく心理的ニーズから起こるもの、物理的ニーズから起こるものの2つに分類できます。さらに自分たちが解決できることと、担当者に電話を回すべきものとの2つに整理します。

 クレームが辛くて、仕事を辞めてしまうスタッフもいます。研修を通じて、事前にクレームはどうしても起こるものであることをスタッフに理解してもらい、くよくよ悩まないようにアドバイスします。大事なのは、とにかくお客様に寄り添って話を聞くことです。それが会社の改善に役立つことがあるので、クレーム対応をポジティブに捉えられるよう指導しています」

――さまざまな研修の内容についてお聞かせいただきました。最後に、「育てる人材を育てる」認定トレーナーについて教えてください。                                                          

小川 「人材育成で大切なのは、管理者の育成です。野球やサッカーのチームが監督によってガラッと変わるように、良い指導者を育てることが、サービスの品質を高める最も効果的な手段です。当社は、オペレーターが最大1500人でスーパーバイザーは90人を抱えますが、認定トレーナーは、WOWCOM Collegeのオーディションに合格した20人しかいません。教える技術の質を高めることに秀でた人材で、クライアントのスーパーバイザーの育成にも実績があります。育てる技術を磨くことが、センターの底上げに効果を上げる近道であると信じています」

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