【事例インタビューNo.3(前編)】解約抑止率改善を実現した、お客様の「キモチ」分析とは?

WOWOWコミュニケーションズでは、お客様の「キモチ」を分析して、マーケティングに活用するソリューション「Plus(+) Solution Service」を提供しています。今回は、このソリューションがどのような経緯で誕生したのか、クライアントのビジネスをどう変えるのかについて、企画部マーケティング課の小池武さんと伊達香澄さんに尋ねました。

顧客データの分析から見えてきた意外な事実とは?

――Plus(+) Solution Service(以下、PSS)とは、どのようなサービスなのでしょうか?

小池「PSSは、大きく3つのソリューションで構成されています。コンタクトセンターでお客様の『キモチデータ』を収集する『コミュニケーションPlus(+)』。キモチデータの分析・仕組み化に取り組む『データコンサルティング』。そして、分析結果をもとにロイヤリティ向上や解約抑止を実現する『クラスタリングサポート』の3つです」

――それぞれについてお聞きする前に、まずPSSをスタートさせた経緯について教えてください。

小池「WOWOWコミュニケーションズは、親会社で有料衛星放送事業者のWOWOWのテレマーケティングを手掛けています。WOWOWの顧客データを分析して、解約率を下げることができないか?と考え始めたのが、PSSを始める2年前の2012年ごろのことです。

 当時も、WOWOWの会員が解約する理由を調査していましたが、目的の番組が終了・見る番組がない・見る時間がないといった、上位3つの理由がいつも同じになっていました。新しい発見や、解約阻止の対策を考えるヒントが得られるわけでもなく、調査がいわば形骸化していたのです。そこで、コンタクトセンターの現場の肌感覚とは別に、顧客データを統計的に分析してみようということになりました」

――WOWOW会員の解約阻止が目的だったのですね。どんなことがわかったのでしょうか?

小池「270万人の会員(当時)を60数個のクラスタに分類し、どんなお客様が辞めやすいのか?と仮説を立てました。すると、驚いたことに、最も解約の可能性が高いクラスタと、最も低いクラスタでは9倍の差があることがわかったのです。

 WOWOWは、顧客満足とロイヤリティが必ずしも直結しないユニークなサービスです。スポーツのように毎週定期的にコンテンツが提供される番組は、お客様の契約も長続きします。一方で、興味のある番組を目当てに会員になり、その番組が終了したら解約するお客様も多いのです。後者の場合、『大満足で辞めていく』ということになります。

 もちろん、こういった傾向については、現場でも当たり前のように理解していました。ところが、クラスタ分析の結果から、一度解約をして、契約再開をしたお客様のなかで、「中断していた期間」が短い方は、再度解約しやすいという傾向がわかりました。要するに、目当ての番組だけピンポイントで見たいというニーズを持つお客様です」

――どのような対策をすれば解約を阻止できるのでしょうか?

小池「ここで重要になるのが、『キモチデータ』です。お客様の深層心理、つまり『なぜそのサービスを選んだのか』を把握するのです。当社のコンタクトセンターのオペレーターは、表面上の会話で終始せずに、本音を導き出すノウハウを持っています。例えば、『見たいテニスの試合が終了したので解約したい』というお客様とコミュニケーションをとることで、『世界で活躍する日本人を応援したい』という『キモチ』が発見できた場合は、海外映画祭で受賞した日本の作品をすすめることで、解約を阻止し、継続して番組をご覧いただくことも可能になります。

 解約の電話を入れてきた会員に対し、可視化した『キモチデータ』を参考に、お客様のキモチに適した案内をすることで、解約抑止率が2.5ポイント改善するという効果が現れました」

「打ち手」を編み出すのは、現場の肌感覚×統計分析力

――WOWOWでの成功体験が、PSSというサービスを生んだのですね。

小池「そうですね。お客様が商品・サービスを買い求めるのはなぜなのか。また、その商品・サービスを辞めて、ほかに乗り換えるのはなぜなのか。これらのキモチデータを集めて、ビジネス資産に活かすことの重要性をクライアントに伝えたいと考えました。

 こうしたキモチデータを収集・分析することの重要性に気づいている企業は、現時点ではそう多くありません。また、収集していたとしても、それを商品開発にまで活用できる組織や仕組みが出来上がっていない場合もあります。

 例えば、自動車産業でいうと、たとえ販売ディーラーが、マイカーを購入したお客様のキモチデータを取っていたとしても、そのデータがログ化されて、全社のマーケティングデータとして活用できる仕組みが整っているかどうかは疑問です。あるいは、外部にアンケート調査を依頼したとしても、まとまってきた調査レポートを読んだだけでは、商品開発や販売戦略に活かすことは難しい。『キャンプが好きだから、SUVに関心がある』という情報はわかっても、その人を狙い撃ちしてSUVのモデルチェンジの情報を届けることはできないからです。当社の場合は、コンタクトセンターでキモチデータを収集していたことが、先ほどの成功の背景にあるといえます」

――「キモチ」を分析するのが重要だと気づいたきっかけは何でしょうか?

小池「WOWOWも、2009年以前は月間の加入者数の管理にとどまっていました。どの番組を見たいから加入したのかという『なぜ』の部分、つまりキモチを把握してはいなかったのです。たとえ加入者数が増加したとしても、それが海外サッカーや海外ドラマ、アカデミー賞など多くの番組のなかの、どれが要因となったのかはわかりませんでした。そのため、番組を買い付ける費用あたりの会員獲得数もわかりませんでしたし、そもそも知ろうともしていなかったのが実態でした。

 ある時、有名アーティストの引退ライブを目当てに加入した会員が何人いるのかを調査することになり、「正」の字を書いて数え始めました。その時、加入者たちを単に量として捉えるのではなく、それぞれがどういう属性の人なのかというデータも一緒に残さないと駄目だと主張したのです。そこで、このデータを会員情報のデータベースと紐づけるシステムを開発しました。

 すると、それまで過去の解約者に闇雲にアウトバウンドの電話をかけていたのが、加入動機のデータをもとに個別のアプローチが可能になりました。Aというアーティストが好きで加入して、一度解約したお客様に対して、『Aの番組を今度放送しますよ』と案内すると、売り込みを受けたと思われるどころか、案内してくれてありがとうと感謝されるようになったのです。高度な統計分析を使った事例ではありませんが、これによって獲得率が上昇しました」 

――データを集めると、自然と打ち手も見えてくるものなのでしょうか。

小池「統計分析を高度にやられる会社はほかにもありますが、当社の強みは、分析で終わらずに、まさにその『打ち手』を提示できる部分にあります。お客様の本音に耳を傾け続けてきたコンタクトセンターの現場の肌感覚と、データ分析を掛け合わせることで、打ち手が見えてきます。成功例を分析したうえで、オペレーターにフィードバックし、次のトークスクリプトに活かすという経験を重ねてきたことが大きいでしょう。そしてこれは、商品やサービスが変わっても応用が効くのです」

――ありがとうございました。次回は、PSSの起点となるデータ収拾の部分から、クライアントの実例を交えてお話をしていただきます。

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