「インサイト」とは?マーケティング戦略に役立つ消費者の心理

マーケティング用語として、「インサイト」という言葉がよく聞かれます。消費者インサイト、顧客インサイトとも呼ばれることもあります。しかし、「インサイト」はよく使われるわりに、意味が理解されにくい言葉でもあります。今回は、インサイトがどういったことを示すのか、マーケティングでどのように役立つのか、事例を挙げて説明しましょう。

インサイトとは?

インサイトは直訳すると「洞察」や「物事を見抜く力」などを意味します。そして、マーケティングにおけるインサイトの意味としては、「人を動かす隠れた心理」を指しています。消費者自身も気づいていない無意識の心理ですが、認識すれば行動を起こすでしょう。

無意識の状態ということで、インサイトは「潜在ニーズ」と混同されることがありますが、これは正しいとは言えません。例えば、「痩せたい」という顕在ニーズがあると仮定します。なぜ痩せたいのかさらに掘り下げると、「健康になりたい」「おしゃれな服が着たい」「自信を持ちたい」などといった理由、潜在ニーズが見えてきます。潜在ニーズは欲求があるのにそれに気付いていない状態を指し、対してインサイトはまだ欲求さえない状態を指しています。

商品やサービスを利用してみて初めてわかる感情だったり、当たり前のこととして見過ごしている課題だったり、インサイトはさまざまなところに存在しています。

なぜインサイトが注目されているのか?

現代は、「モノが売れない時代」といわれています。高品質で手ごろな商品やサービスが当たり前になり、どれを選んでもそう失敗はしないでしょう。消費者が商品やサービスを選んだ理由は特にはっきりしていないことが多く、商品やサービスを選ばなかった理由も明確ではありません。

多くの人が満たされた今、企業にとって消費者の必要とする商品やサービスは「需要を見つけてつくる」のではなく、「需要からつくり出す」ものになりました。機能や品質が均質化され、消費者に重要視されるのは「価値」や「体験」です。消費者の置かれている状況を理解し、そこから考えられる消費者が必要とする何か、つまり「インサイト」を発見しなくては、新たな需要をつくり出すことは難しいのです。

インサイトマーケティングの事例

次に、インサイトをマーケティングに活用し、成功した具体例を挙げてみましょう。

日清食品・カップヌードルリッチ

日清食品のカップヌードルは、発売から45年を超えるロングセラー商品です。しかし、「若者が食べる」という印象が強いせいか、60歳以上の購入は低迷していました。そこで日清食品は、新しいことに意欲的で情報発信力のある、「アクティブシニア」に着目します。これまでのシニア向け商品は、減塩や低カロリーといった健康志向を打ち出した商品がほとんど。しかし、アクティブシニアを調査すると、SNSでは豪華な食事の写真が並びます。口では健康志向と言いながらも、健康のためにおいしさを諦めたくないということがわかったのです。
こうしてシニア向けにプレミアム感を打ち出した「カップヌードルリッチ」が誕生しました。健康に配慮しつつも、フカヒレスープやスッポンスープなどのぜいたくな味が特徴です。通常より高価格であるにもかかわらず、味にこだわりのあるシニア層を中心にヒットし、発売7カ月で1,400万食を突破しました。

この事例は、シニア層は健康志向だから若者向けのカップヌードルを食べないわけではなく、「おいしければカップヌードルだって食べる」というインサイトの発見があります。

フォルクスワーゲン(Volkswagen)・「Think small.」

1959年のアメリカで、自動車メーカー・フォルクスワーゲンは小型車「ビートル」のキャッチコピーに「Think small.」を掲げました。当時のアメリカは「大きいことはいいこと(Think big)」という考えが一般的で、自動車もそれにならって大型車が主流でした。
1960年のアメリカの平均的世帯人数は3.33人。必ずしも大型車が必要なわけではありません。フォルクスワーゲンは特に大型車がほしいわけではなかったり、「大きくなければ」という思い込みでコストをかけたりしている消費者のインサイトに注目し、「Think small.(小さいことが理想)」というメッセージを発信しました。優れた広告クリエイティブも手伝い、コンパクトで性能も燃費もいいビートルはアメリカ国内で爆発的に販売台数を伸ばします。「実質的なビートルを選ぶのは賢い消費者」というイメージまで獲得しました。

大きい自動車が主流でも家族の数と合っていないという事実から、小さな車でも家族で乗るなら問題なくコストも抑えられると転換したインサイトの発見事例です。

大戸屋ホールディングス・2階以上の店舗

大戸屋ホールディングスがチェーン展開する和定食店「大戸屋ごはん処」は、地下や2階以上に位置していることが多いです。一般に集客力が弱いといわれる地下や2階に店舗を置くのは、ターゲットである女性客のインサイトと関係があります。
大戸屋ごはん処が全国展開を始めた1990年代、和定食チェーン店はまだ少数。さらに、定食店は男性がたくさん食べるために行くところというイメージが強くありました。大戸屋ホールディングスは新たな客層である女性を呼び込むため、「一人での外食が苦手」という女性の気持ちに着目。調査を進めると、一人で外食するのが苦手なのではなく、「一人で店に入るところを見られたくない」というインサイトが見つかったのです。地下や2階という人の目に触れにくい場所に店舗を構え、きれいで明るい内装や野菜をふんだんに使ったメニュー、当時珍しかったカロリー表示などで女性客の心をつかみました。

インサイトを見つけるためには

インサイトを見つけることで、消費者の需要を満たす製品やサービスを開発するアイデアが生まれます。また、インサイトにアピールするキャンペーンを展開でき、市場でのポジション強化につながります。インサイトは効果的なマーケティング戦略を立てるのに欠かせない要素です。

インサイトは消費者自身も意識していない領域。言動や行動、感情、思考など、消費者の表面的な部分から奥底のインサイトを見抜かなければなりません。アンケート調査からインタビュー、行動観察、ソーシャルリスニング、コラージュエクササイズ、文章完成法など、インサイトを見出すための調査方法はさまざまです。どれか一つを行ったからといって発見できるものではなく、あらゆる調査で得られた結果を基に洞察を加える必要があります。

見つかってみると特に目新しいことではないことが多く、ほんの少しの引っかかりから因果関係や相関関係を探った先にインサイトは存在しています。非常に難しく感じますが、好奇心をもって消費者を観察することがインサイトを見つけるための第一歩。膨大なデータを収集したり、似たような事柄を結び付けたりして考えるためには、マーケティングリサーチ会社や分析ツールなどを利用することも手段のひとつです。

インサイトの発見とアピールで市場のポジション強化

消費者のインサイトを発見し、そこに焦点を当てたキャンペーンを実施することで、消費者自身も気がつかなかった新しいニーズが生まれ、市場でのポジション強化につながります。無意識で当たり前だと思っていたところに、インサイトの発見はあります。消費者インサイトを探索し、強力なマーケティングにつなげてみませんか。


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