【事例インタビューNo.4(前編)】「ファンボイス」で行動ログでは見えてこない“キモチ”を探る

WOWOWコミュニケーションズでは、お客様の「声・キモチ・行動・期待」を継続的に収集・分析し、各種施策に活用するサービス「ファンボイス」を提供しています。サービスの元となる仕組みは、親会社であるWOWOWがお客様を深く理解するために実施した取り組みから生まれています。今回はファンボイスの誕生経緯とその特徴、活用メリットについて、マーケティング部マーケティング課の伊達香澄さんと営業部Webソリューション推進課の大川祐太郎さんに聞きました。

 

サービス改善の糸口は、データの背景にある『なぜ?』にある

――最初に、ファンボイスとはどんなサービスなのかを教えていただけますか。

伊達「ファンボイスを一言で表すと、『自社のお客様から商品やサービスの意見を継続的に聴取するサービス』です。サービスの仕組みは、親会社で有料衛星放送事業者のWOWOWで長年実施していた顧客分析の仕組みから得たノウハウを元につくられています。

WOWOWの事業において、280万人いるお客様の加入継続率を高めることは極めて重要なテーマです。WOWOWでは以前から、お客様を深く理解するために、契約情報や番組視聴ログなど多種多様なデータを蓄積していました。集めたデータをさまざまな視点で分析した結果は、各部署でサービス改善や新施策の企画立案などに活かされています。

その一方で、いくら多くのデータや行動ログを集めて分析してみても、どうしても明らかにならないこともありました」

 

――データの蓄積だけでは明らかにならなかったこととは、一体何だったのでしょうか。

伊達「それは、お客様の“キモチ”です。WOWOWの場合で説明すると、ある番組が見たくて加入された方が継続された理由や、放送外のサービスの利用が伸びない理由まではなかなか見えてこなかったのです。

定量的なデータの蓄積と分析だけでは、『きっとお客様はこう考えたのだろう』という“仮説”までしか見えてきません。『なぜ加入し続けているのか』という具体的な“キモチ”は、探りきれなかったのです。

お客様の“キモチ”を突き詰めていくためにどうすればよいのか——いろいろと考えた末、結局のところシンプルにお客様から直接ご意見を伺うのが最適であるとの結論に至りました」

 

――WOWOWでお客様をより深く知ろうと試行錯誤した経緯があって、ファンボイスの元となる仕組みが生まれたのですね。

伊達「はい、そうです。実際にWOWOWでは、事前に選抜したアンケートパネルに対して、月に2回、10問程度の設問をメールでお送りするという仕組みです」

 前002.jpg

顧客の率直な意見を継続的に集める

――「お客様を知る取り組み」という観点で見て、ファンボイスの特徴はどんな点にあるでしょうか。

伊達「ファンボイスの特徴は2つあると考えています。ひとつは『アンケート対象者を自社の顧客とすること』、もうひとつは『継続的に聴取すること』です」

 

――ポイントのひとつ目『アンケート対象者を自社の顧客とする』について詳しく伺います。まず、アンケート対象者を自社の顧客にした理由は何だったのでしょうか。

伊達「最も大きな理由は、自社サービスを利用してくださっている方々にご回答いただくことによって、具体的な意見を集められるからです。

今回のアンケートパネルとなった方々は、全加入者のなかでもとりわけWOWOWをよく利用しており、サービスにも詳しい方々です。WOWOWに対する熱量が高い分、彼らは良い評価も厳しい評価も率直にご意見いただけます。また改善に前向きな方々が多いので、具体的な改善案も提示してくださいます。

コスト面を考えても、自社顧客をアンケート対象にするメリットがありました。調査会社など第三者に委託する場合に比べて、安価で取り組むことができます。また、アンケート実施からデータ収集までスピーディーに行えることも魅力的です。一連の流れが自社内で完結しているので、回答期間内でも結果を確認できる点も良いと感じました」

 

――自社顧客のなかから、ファンボイスに協力してくださる顧客を選抜したプロセスを教えてください。

大川「『会員様が継続契約してくださる理由を探る』という目的に適したアンケートパネルをつくるために、最初に『継続加入年数1年以上の会員様』に対して複数回アンケートを実施しました。その回答状況や内容を分析して、アンケートに継続的に答えてくださる会員様を選抜し、“ロイヤル顧客”としてパネル化しました」

 

――『継続的に聴取する』ことも、ファンボイスの特徴ですね。継続聴取することで、どんな価値が生まれるのでしょうか。

伊達「一度のアンケートでは集めきれない量のご意見を得られます。アンケートを続けるなかで新しいテーマについて設問化することもできますし、過去のアンケート結果を踏まえてさらに深い意見を伺う設問を投げかけることも可能です。

時系列でお客様のキモチの変化を追うことができる点も、単発のアンケートでは得られない価値です。アンケート結果は会員IDで紐づけているので、複数回のアンケート結果から個別具体的なお客様像を見いだすこともできます。お客様の“キモチ”について、ある一点の瞬間だけでなく、点をつないで変化の線を捉えられることも、お客様の理解を深めるうえで大きな価値だと思います」

前003.jpg

顧客データを数多く収集できる今だからこそ、お客様の“キモチ”を直接聴く価値が高まる

 

――WOWOWでファンボイスを実施してから、どんな変化がありましたか?

大川「ファンボイスで継続的に集めたお客様のご意見をきっかけに、定量データの抽出と分析では見えなかった課題の真因を掘り起こすことができました。その結果、当初WOWOW社内で考えていた範囲を超えた改善策の発見につながりました。

定量データの分析で導きだした『きっとお客様はこう思っているだろう』という“仮説”は、実際にファンボイスで集めた“キモチ”そのものではないんですよね。改めて、お客様の“キモチ”を直接聴くことの大切さを実感しました」

 

――顧客行動を知る方法は多様化しています。そうしたなかで、改めて「お客様の“キモチ”を聴く」ことの価値はどのようなところにあるのでしょうか?

大川「確かに今の時代は、お客様の行動を知る手法が多様化していますし、取得できる行動ログの種類も豊富です。それゆえに、たくさんのデータを収集・分析することでお客様のすべてを理解した気になってしまうリスクもあります。

繰り返しになりますが、お客様の“キモチ”を具体的に理解するには、直接お客様の声を伺うのが最良の方法だと思います。これはWOWOWのようなエンタメ業界に限らず、どんな業界でも言えることではないでしょうか。

だからこそ、WOWOWで取り組んだファンボイスのノウハウが他の企業様にも活きてくると考えています。そうした思いで、2年ほど前からグループ外の企業様にもファンボイスを展開しているところです。ご相談いただくお客様の業種や、顧客データの管理・運用状況もさまざまであることから、ファンボイスを活用できる場面は数多くあると感じています」

 

――ありがとうございました。後編ではファンボイスの活用例を、実際のケースも含めて伺っていきます。

 

つづき≫【事例インタビューNo.4(後編)】企業へのロイヤルティが高まる理由は意外なところに

関連記事