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コールセンターの研修、詰め込みで完璧に習得できるのか?

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【要約】結論として詰め込みでの習得は難しい。現場での継続的フォローが必須。

コールセンターの研修、詰め込みで完璧に習得できるのか?コールセンターの研修を一度受けただけで、現場のノウハウを完璧に習得することは難しいです。研修後のフォローが極めて重要であり、実践を通じて学ぶ機会が必要になります。現場では「ラウンダー」と呼ばれる担当者がオペレーターを巡回し、リアルタイムで疑問に答えられる体制を整えています。また、ラウンダーを支える「リーダー」の役割もあり、研修の内容が実際の業務に落とし込まれるよう継続的なフォローが行われています。こうしたサポートなしに、研修だけで業務をマスターするのは現実的ではありません。  

研修の進め方:コールセンターの研修には、業務に必要な知識を学ぶ「業務研修」と、より広範囲で活用できる「汎用スキル研修」の2種類があります。業務研修は短期間で集中的に学ぶ必要があり、特に新人オペレーターには1ヶ月程度の研修期間で必要最低限の知識を詰め込みます。ただし、研修期間を長く取りすぎると離脱者が増えるため、研修後に段階的に学ぶ形へ移行することが推奨されています。一方で、クレーム対応などの汎用スキルは、現場経験とともに習得するのが効果的であり、外部研修機関を活用するケースもあります。  

マインドの重要性:研修において、スキルよりもまず「マインドの習得」が重要とされています。特に外資系のコールセンターでは、企業理念やホスピタリティを徹底するために、入社時のマインド研修が必須となっています。マインドの形成が後回しになると、業務に慣れた後では修正が難しくなり、「私には私のやり方がある」といった状態に陥るリスクが高まります。そのため、適切な考え方を研修の初期段階でしっかりと定着させることが、スキルの習得や業務の効率化につながります。最終的には、オペレーターごとにスキルのレベル差が生じるため、個別に最適化された研修やフィードバックが必要になります。

どのようにすれば、研修の効果を最大限に高められるのか?

コールセンターの研修を実施したのに、いざ現場に立つと「うまく対応できていない」「覚えたはずなのに実践できていない」と感じたことはありませんか?

たった一回の研修で、現場で活かせるノウハウを完璧にマスターするのは難しい。なぜなら、研修だけでは対応力を定着させるには不十分であり、フォローアップが欠かせないからです。

では、どのようにすれば研修の効果を最大限に高め、現場で即戦力として活躍できるのか。

本稿では、研修後のフォローアップの重要性や、段階的な学習プロセスのポイントを解説します。現場で実践できる研修の進め方を知りたい方は、ぜひご覧ください。

スピーカー

富樫 雄太

SNSマーケティング会社、研修会社などを経て、2016年に(株)WOWOWコミュニケーションズへ入社。部門のマネジメントに当たる傍ら、クライアント企業の品質改善のコンサルティング/人材育成/品質調査/フィードバック等を担当。

インタビュアー

原澤 陽

合同会社HARAFUJI Co-Founder COO | 大学在学中の19歳より株式会社ギャプライズにてBtoCデジタルマーケティング、BtoBマーケティング、法人営業に従事。その後、チーターデジタル株式会社にて法人営業を経て、 現在は合同会社HARAFUJIの共同創業者として独立。BtoBマーケティングを中心とした戦略および戦術支援事業に従事している。登壇実績

コールセンターの研修一発で、現場はノウハウをマスターできるのか?

━━━コールセンターの現場にて様々な研修を実施されていますが、実際のところ、現場でそれらを完璧にマスターできるものでしょうか?

これは、研修を受けた後、特にフォローなしでもマスターできるかどうか、という質問ですよね?

━━━ おっしゃる通りです。

それは無理ですね。やはり、研修を受けただけでコールセンターの応対はマスターできません。

むしろ、研修後のフォローが圧倒的に重要。 実践の中で学んでいく機会を作らないといけません。研修だけで完結することはほぼありません。

━━━フォローはSVやセンター長、もしくはWOWOWコミュニケーションズの方が担当されるんですか?

そうですね。 オペレーターのフォローをする役割として「ラウンダー」 というポジションがあります。

ラウンダーはコールセンター内を巡回し、オペレーターが分からないことがあった際に対応する役割 です。

具体的には、オペレーターが分からないことがあれば手を挙げ、ラウンダーがその場に駆けつけ、即座にサポートします。

このような形で、現場のオペレーターがスムーズに業務を進められるように支援するのがラウンダーの役割です。

━━━ラウンダーの方は研修内容をしっかりマスターしている立場で、オペレーターが手を挙げた際に、対応方法や心構えについて「研修でこう習ったよね、だからこうするんだよ」という形で補足・フォローするようなイメージでしょうか?

まさにその通りです。

フォローをするポジションは、下記の2つ。

  • ラウンダー:現場を巡回してサポート
  • リーダー:WOWOWコミュニケーションズの場合、ラウンダーの上席にあたる役割で、フォローをより広範囲で担う

この2つのポジションがあり、特にWOWOWコミュニケーションズではリーダーもフォローアップの役割を担うことが多いですね。

━━━ なるほど。つまり、リーダーはラウンダーをフォローする立場ということですね?

ここはコールセンターによって異なりますが、そういうケースもあります。

  • リーダーがラウンダーをサポートする場合:ラウンダーがオペレーターをフォローし、そのラウンダーをリーダーが支える形
  • リーダーが直接オペレーターをサポートする場合:オペレーターのフォローをラウンダーだけでなく、リーダーも直接行うケース

どちらの形態を取るかは、コールセンターの規模や運用方針によって変わります。

コールセンターにおける研修の進め方

━━━では次に、研修の進め方について教えてください。研修は一気に詰め込んで実施される、または、段階的に進めていく。どちらのパターンで進められますか?

これはどちらのパターンもあります。

前提として、コールセンターの研修には大きく2つの種類があると考えています。これは業界の一般的な考え方というより、私自身の主観も含みます。

一つは業務研修と呼ばれるもので、その業務を遂行するために必要な知識を学ぶ研修です。

例えば、テレビの修理受付センターの場合、オペレーターは当然、テレビに関する基礎知識を持っていなければなりません。

そのため、まずテレビの基本的な知識を教える研修が必要になります。さらに、そのコールセンター独自の運用ルールや手順についても伝える必要があります。こういった、特定の業務をこなすための研修が業務研修にあたります。

━━━例えば、お客様から「テレビが壊れた」と問い合わせがあったときに「このように回答する」という内容はマニュアルに近いものですか?

その通りですね。基本的にはマニュアルを使い、オペレーターと一緒に読み上げながら対応を進めていく形になります。

━━━なるほど。これが1つ目の「業務研修」ということですね。2つ目は何でしょうか?

2つ目の研修は、WOWCOM Collegeが提供しているような、より汎用性のある研修になります。

これは特定のコールセンターに限定されず、どのセンターでも共通して必要となるスキルを身につけるためのものです。

例えば、一般的な電話応対のスキルを教える研修や、クレーム対応の基本的な考え方を学ぶ研修などが該当します。

このようなスキルは、テレビの受付センターであろうが、何かの予約受付センターであろうが、どんな業務でも共通して求められるものです。

こうした研修を担当するのがWOWCOM Collegeであり、これが2つ目の研修の種類です。

━━━WOWCOM Collegeでは例えばクレーム対応について深く学びますが、一般的には業務マニュアルの中に「もしクレームがあったらこう対応する」のような記載があるのでしょうか?

そういうケースもありますね。

もしくは、外部研修機関に部分的に依頼したり、あるいはWOWOWコミュニケーションズのような企業に特定の研修だけご依頼をいただくケースもあります。

━━━ なるほど。だから、WOWOWコミュニケーションズではコールセンターの運営を担っていなくとも、WOWCOM College単体のお仕事があるんですね。

そうですね。

前提として、業務研修とカレッジ研修の2つがあるからこそ、必要に応じてお客さまがWOWCOM Collegeの研修だけを依頼するケースもあります。

━━━なぜ、貴社のコンタクトセンターに、弊社のソーシャルスタイル研修を導入しましたか?

大西様

テレビブースでは「解決率を上げればお客さま満足度が向上するのではないか?」と考え、さまざまなトライをしてきました。

しかし、トップボックスを向上させるという点では解決率ではなく、印象の良さが最も相関が強いことが分かりました。

特にテレビブースのお客さまでは、その傾向が強かったです。

そのため、印象を向上させるための具体的な方法を模索する中で、ソーシャルスタイル理論に注目し、貴社に研修をお願いしたのが理由です。

引用元:【株式会社オプテージ】コールセンター研修にソーシャルスタイル理論を実装した理由

コールセンターの研修は、詰め込んで実施する?

━━━実際にコールセンターの研修は詰め込んで実施する、または、段階的に実施する。どちらのケースが多いのでしょうか?

これも一概には言えませんが、業務研修については詰め込みで行う傾向が強いです。

━━━ そうせざるを得ない。

その通りです。

新しく入社したオペレーターには、最初の1ヶ月間で、例えばテレビの知識を徹底的に学んでもらったり、マニュアルを読みながらロールプレイングを繰り返したり、とにかく短期間で業務に必要なスキルを詰め込む形になります。

ただし、これは業務による部分もあります。一般的にはこの形が多いですが、例外もあります。

例えば、当社のコールセンターのお客さまにて、テクニカルサポートセンターを運営しています。テクニカルサポートは、問い合わせの範囲が非常に広く、扱う知識が専門的なため、覚えるべきことが膨大になります。

そのため、研修の負担が非常に大きくなります。

過去には、こうした知識をしっかり定着させるために、入社後2〜3ヶ月間、みっちり研修を行うスタイルを取っていた時期もありました。最初の段階で、できる限り全てを詰め込もうという方針です。

しかし、結果的にこの方法はうまくいきませんでした。研修の途中で離脱する人が続出し、3ヶ月を待たずに辞めてしまうケースが多発したのです。

━━━それは辛いですね…

せっかくお金をかけて採用したのに、1ヶ月で脱落してしまう。

覚えることが多すぎて嫌になったり、難しすぎて挫折してしまったり。結果的に、3ヶ月の研修を乗り越えられる人はほとんどいなかった。

そうなると「やっぱりこのやり方は良くないよね」という話になりますよね。

そこで本ケースの場合は「最初に全部詰め込む」方法ではない、研修の進め方を見直すことにしました。

まず、最初の研修期間を3ヶ月から1ヶ月に短縮。最初の1ヶ月間で伝える内容も必要最小限に絞り、「とりあえずこれさえ知っていればデビューできる」というレベルに調整しました。

1ヶ月の研修を終えて業務に入ったあと、少し仕事に慣れてきたタイミングで、次のステップとしてもう少し難易度の高い業務を教えるように変更。

段階的にスキルを習得できるように、いくつかのステップに分ける構成に変えました。

この方法に切り替えたことで、研修途中の離脱が減り、オペレーターが無理なく成長できる仕組みになったというわけです。

覚えるべきことが多すぎると、詰め込むだけではキャパオーバーになってしまう。だから、研修で扱う情報量に応じて、詰め込み方式を取るか、段階的に進めるかを決める必要があります。

━━━これは単純に「研修を詰め込むことが良い・悪い」ではないですね。結局、ビジネスモデルや運用状況、着電数、求められるスキルレベルなどによって、最適な研修スタイルは変わってくるということですよね。

そうですね、その通りです。

コールセンターにおける研修の詰め込みと情報不足のバランス

━━━一つ、気になったことがあります。研修のお話を伺う中で、研修の「詰め込みすぎ」と「情報不足」のバランスをどのように調整していますか?

そうですね、これも一概には言えません。

ただ、一般論として言えば「必要最低限の仕事をするために、どうしても必要な知識」は最初に詰め込むべきだと考えています。

しかしながら、「必要最低限」がどこまでなのかは、企業ごとに異なるため、一概に線引きすることは難しい というのが実情です。

ただし、「この知識がないと、お客さんと話せない」というレベルのスキルは、最初の段階でしっかり詰め込みます。

その後は、ステップに分けて進めていきます。

例えば、ステップ1の知識は最初の研修で詰め込む。ステップ2、3、4といったより高度な知識は、進捗を見ながら個別に伝えていく…といった形です。

「最初に必要最低限を固めて、あとは状況に応じて段階的に追加」する形が基本であり、最終的には、個別最適の形になります。

━━━ 最低限の業務をこなせるようになった上で、さらに「おもてなしの心を持って対応できる」「提案ができる」といったスキルを身につけることで、次のステップへ進む。その際、「これを習得したら次のステップへ進める」という明確な指標を細かく示しているのか、それとも、状況を見ながら「このタイミングでこれを追加したほうがいい」と柔軟に調整しているのか、どちらの形に近いのでしょうか?

WOWCOM Collegeとしては、細かい段階指標の設計までは手が届かないのが実情です。

WOWCOM Collegeで提供する研修は、基本的に「必要最低限レベル」のスキルにフォーカスしています。例えば、電話応対の基本や、クレーム対応のスキルといった、どのセンターでも共通して必要とされる研修がメインになります。

ただ、それ以上の細かいスキルアップのステップについては、WOWCOM Collegeではフォローしきれない部分があります。

なぜなら、研修を受けた人たちが現場に戻って、日々の業務の中でどのように成長していくかは、我々が直接見ることができないためです。

そのため、現場でのスキルアップの仕組みづくりは、最終的にはコールセンター運営側に委ねられる部分が多いというのが現実です。

━━━研修自体の話ではないですが、研修後のアフターフォローについて、もしWOWCOM Collegeが踏み込むとしたらどうなるんでしょうか?

現在のサービスメニューの中で、それに近いものとして「個別フィードバック」というメニューがあります。

これは、オペレーター一人ひとりに対して、私やWOWCOM Collegeのメンバーが1on1の形でフィードバックを行うサービスです。

具体的には、電話応対の通話ログを聞いて「あなたの電話応対のここが良いですね」「ここを改善するともっと良くなりますね」といった形で、個別に細かくフィードバックを提供するものになります。

研修後の次のステップとして考えると、この「個別フィードバック」が最も研修の延長線上にあるサービスかもしれませんね。

━━━ なるほど。やはり最終的には、当たり前ですが、個別最適化が進んでいくわけですね。

突き詰めていくと、そうなりますね。スキルのレベル差も出てくるので、個別の対応が求められる場面が多くなります。

まずは、マインドの研修が大事。

━━━やるべき研修のバランスを取ることを前提に「これは必須」と言える研修があるとしたら、それは何でしょう?

WOWOWコミュニケーションズでは、入社したオペレーターに対して「マインド研修」と「電話応対のスキル研修」を必ず実施しています。

そのため、最低限やるべき研修を挙げるとすれば、「電話応対のマインド研修」と「電話応対のスキル研修」です。

━━━世の中がリスキリングなどのスキル強化にどんどん向かっていますが、結局のところ、「まずはマインドが大事だ」 という考え方が根本にあるんですね。

最初にやっておいたほうが、結果的に効率がいいんですよね。

マインドは後から修正しようとしても難しい。既にある程度仕事に慣れてしまったり、スレてしまっていると、「今さら何ですか?」 みたいな反応になりがちなんです。

「私には私のやり方がある」という状態になってしまう前に「正しいマインドはこうです」 と最初に伝えておく。そこで考え方をしっかりと握った上で「では次に、このスキルをつけていきましょう」と進める方がスムーズです。

━━━マインドの研修を先に実施するのは、一般的なんでしょうか? 

比較的どこでもやっていると思いますよ。特に外資系のコールセンターでは、ほぼ確実にマインド研修を行っています。

外資系のコールセンターでは、企業ごとのマインドや哲学、ホスピタリティの概念を入社時点で必ず詰め込むという文化があります。

その会社の価値観を徹底させるために「まず考え方を統一する」 ことを重視するわけです。

━━━なるほど。マインド醸成および最低限の研修を実施した後に、オペレーターが研修で習ったことを実際に業務でできているかどうかは、どのように確認されていますか?

これは研修の種類によって確認方法が変わります。業務研修と汎用的なスキル研修では、確認の仕方が少し異なります。

まず、業務研修の場合、各センターでさまざまな取り組みが行われています。

最も一般的な方法は、ペーパーテストですね。業務に必要な知識が出題され、一定の点数を取れば合格 という形で確認する方法です。

業務研修の知識定着の確認方法としては、ペーパーテストの他にロールプレイングもよく行われています。

例えば、管理者が「お客さま役」となり、オペレーターに対してアドリブで質問を投げかける。

台本なしの状態で、オペレーターが正しく回答できるかどうかをチェックする。こうした方法で、実際に業務で通用するレベルに達しているかを確認するわけです。

一方で、汎用的なスキル研修の定着を確認するのは、業務研修と比べて難しいですね。

WOWCOM Collegeでは、応対品質調査を定期的に実施して、前回より改善しているかどうかを評価しながらチェックする、というやり方を取っています。

━━━なるほど。汎用的なスキルの確認は、毎回のことですが「60項目のマルバツ」を徹底的に繰り返して評価する形ですね。

そうですね。

━━━「評価」について気になりました。評価は主観的であり、一つの対応に対して人によって良し悪しがわかれるのではないでしょうか。その際、評価の客観性やバランスを維持するためにされていることはありますか?

WOWOWコミュニケーションズの場合、主観、個人の感覚、勘といったものを取り除いた客観的な指標を重視しています。

それを具体化するために導入しているのが「サービスサイエンス」の考え方です。

サービスサイエンスを元に評価シートを作成しています。このシートは、オペレーターの電話応対の行動におけるチェック項目を用意しています。

例えば「明るい挨拶をしている」「復唱している」といった応対中の一つ一つの行動をチェック項目に落とし込んでいます。合計60項目ほど、行動を細かく分解し、チェック項目化しています。

サービスサイエンスの考え方、および、細かく分けたチェック項目によって主観の入り込む余地がないような設計を採用しています。

引用元:【基礎編】コールセンターの応対品質の高め方

━━━やはり「60項目のマルバツ」のような、地道な徹底が成果を生むんですね。

そうですね。

結論としては当たり前で、答えとしては面白くないのかもしれませんが、結局は「どこまで地道にやれるか」という現実と向き合うしかないです。

この記事を書いた人

猪越 みなみ

2023年WOWOWコミュニケーションズ入社。 過去カスタマーサポート、BPO業務のソリューションセールスに従事。 現在は、営業の経験を活かし、BtoBマーケティング領域の営業企画を担当。

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