【コールセンターの品質管理】“真”の顧客満足に必要な2つの考え方。
目次
要約:成果品質と応対品質の両方を高めることで、真の顧客満足を獲得できる。
品質の高いコールセンターは成果品質と応対品質の両方を高めること:コールセンターの品質管理には成果品質と応対品質の両立が求められます。お客さまにとって気持ちのいいコミュニケーションをとりながら、いかに数字成果を出していくかという視点が重要です。顧客満足度を高めるためには、これら2つの品質をバランスよく管理することが必要です。
成果品質と応対品質の違い:成果品質はコールセンターのKPI達成に関する指標で、応答率や成約数など具体的な数値に基づきます。応対品質はオペレーターの話し方や態度など顧客対応の質を示し、音声の評価や第一声の印象などが含まれます。これら2つの品質は異なる側面であり、どちらも重要です。
成果品質と応対品質のジレンマ:コールセンターでは、成果品質と応対品質の両方を高めることが難しいというジレンマがあります。運用マネジメントが成果品質を重視する一方で、応対品質が疎かになることがあります。結論としては、どちらも重要であり、両立こそが真の顧客満足度を獲得できます。
成果品質とは?:成果品質は、KPI達成を目指す品質管理の側面で、例えば高い応答率や成約数、稼働率の確保が含まれます。運用マネジメントの徹底により、オペレーターのパフォーマンスを高め、センター全体の生産性を管理することが重要です。
応対品質とは?:応対品質は顧客対応の質を評価するもので、オペレーターの話し方、態度、音声品質などが含まれます。WOWOWコミュニケーションズでは、独自の理論に基づき、正確性、迅速性、柔軟性、共感性、安心感、好印象の6つの要素で評価し、顧客満足度を高める取り組みを行っています。
※本編は“WOWCOMポッドキャスト”をテキスト化した内容です。またサムネイル画像およびYouTube内の画像にはDALL·E 3を使用しています。
コールセンターで真の顧客満足度を得るために。
コールセンターの品質管理は、どの企業においても難しい問題です。
運用マネジメントの徹底により成果品質を向上させる一方、応対品質が疎かになることが多々あります。このバランスをどう取るかが、コールセンターにおいて顧客満足度を高めるための鍵となります。
ポイントは「成果品質と応対品質の高さを両立すること」。
この記事では、成果品質と応対品質の違いやそれぞれの重要性、そしてそれらを両立させるための具体的な方法について、長年コールセンターの課題解決に関わってきた当社社員が解説。
品質の高いコールセンターを目指すためのヒントを提供します。
成果品質と応対品質を高めることが、真の顧客満足を生む。
━━━そもそも、コールセンターの品質管理とは何でしょうか?
コールセンターの成果品質と応対品質、この2点の管理のことを指します。
品質というと多岐にわたりますが、例えば成果KPIの達成も品質の一部ですし、コールセンターでよく取り上げられるのは応対品質です。その中には、音声の品質なども含まれます。
したがって、成果の話と応対の話に大きく分かれるのが、コールセンターにおける品質の議論だと捉えています。
━━━成果品質と応対品質、それぞれ何が違うのでしょうか?
品質の捉え方として、成果品質は「KPIを達成すること」を重視しています。
例えば、コールセンターの運用では応答率を確保することや、アウトバウンドの場合はわかりやすく成約数を担保することなどが含まれます。これらのKPIに基づいたものが成果品質に関わる話です。
また、一般的には応対品質も重要とされています。よくあるのが、音声評価です。
例えば、オペレーターの録音を聞いていて、第一声が非常に良い「おはようございます」といった挨拶がしっかりしていると、品質が高いと感じられます。
コールセンターは企業の顔となるため、第一声が良いと企業ブランディングにも良い影響を与えます。そのため、話し方でお客さまが不快な思いをしないことを応対品質と捉える企業も多いです。
しかし、これでは不十分だと、WOWOWコミュニケーションズは考えます。
例えば、非常に気持ちよく会話ができていても、オペレーターが質問内容を十分に理解しておらず、一般的な回答しかできない場合。これだと、心地よくお客さまはなんとなく回答を得られたものの、問題が解決しないと感じます。
一方、暗くてボソボソと話すオペレーターでも、的確に問題を把握し、わかりやすく説明してくれる場合。これだとお客さまは不快を感じるものの問題は解決し他という結果になります。
原澤さんは、どちらが良いサービスだと思いますか?
━━━私の性格としてはボソボソだとしても解決してくれた方がまだましかなと思いますが、いかがでしょう?
正解は、どちらもNGです。品質の高いコールセンターは、成果品質と応対品質、どちらも高くなくてはいけません。
たとえ良い音声であってもお客さまの問題を解決しなければ、真の顧客満足度は満たせません。逆も然りです。
おそらくどちらのケースでも、お客さまは再度電話をしてくれないでしょう。
したがって「また何かあった場合に、もう一度気持ちよくお電話してくださることが、お客さまにとっての満足度が高い」という仮説を立てた場合、両方をきちんと評価し、高いレベルの応対とはどういうものかを示す指標を設定することが重要です。
WOWOWコミュニケーションズの応対品質評価は「真の顧客満足度」を満たすための評価制度を設けており、これは少し特徴的な点だと考えています。
故に、コールセンターの品質が高いと言える状態は、成果品質と応対品質、この両品質が高い状態であることです。
成果品質は、運用マネジメントの徹底で高められる。
━━━成果と応対の話、それぞれ伺います。まず、成果品質についてです。成果品質を上げるために、コールセンターはどのような取り組みを行えば良いのでしょうか?
結論、運用マネジメントの徹底が答えです。
成果品質は基本的に個々のオペレーターのパフォーマンスに依存します。ひいては、センター全体のマネジメントも重要です。
実際、複数のオペレーターがいる中で能力差があります。その中で、数字達成に向け、KPIから生産性の管理を行います。
これの積み重ねによって、センターの目標達成に影響します。運用マネジメントの品質チェックがKPI達成において重要になってきます。
━━━運用マネジメントができている状態は、どのコールセンターも目指したいと思います。この点、うまくいく運用マネジメントと、うまくいかないマネジメントの違いは何でしょうか?
まず大前提として、数字管理ができているかどうかが重要です。
センター運営では、忙しいと目の前の業務に忙殺され、個別のパフォーマンスに注意が向かないことが多々あります。特に、応対品質が疎かになることが多い。これは生産性にあまり影響しないと見なされることが理由です。
故に、センター運営のマネジメントで必要な要素は、まず数字管理ができていることです。その上で、各業務がきちんと整理されているかどうかが、運用マネジメントの成否を分けます。
スーパーバイザーなど、オペレーターを補佐するリーダーがいる場合、トラブルシューティングだけでなく、数字達成のためのロジックを理解し、それをもって運用コントロールできていることが重要です。
数字が目標に達しない場合、どこに力を入れるべきかを見える化し、対応できる状態が良いマネジメントをしているセンターです。それができていない場合、人手が不足しているか、役職に対する業務の定義が明確でないかが原因です。
リソース不足や時間不足、適切な数字を設定していないことが基本的な問題となります。
うまくいくコールセンターの運用マネジメント
- 数字管理ができている
- 数字達成のロジックを理解している
- 各業務がきちんと整理されている
- KPIが未達の際、どこに力を入れるべきか見える化できている
━━━最後におっしゃったことが、かなり重要ですね。元となるKPIの設計がずれていたら、その後、どんなに頑張っても問題が起こる。
実は、コールセンターのKPIはシンプルです。
例えば応答率はシンプルで、お客様からの電話に何件応答できるかという指標です。応答率が非常に低いと、電話がかかってきてもつながらないセンターになってしまいます。
応答率はコールセンターの基本機能ですが、応答率を担保できない場合、入電予測ができているかどうかが問題になります。
どのくらいの入電があるかという計画が立てられているか、その計画に対して人員が適切に配置されているかが重要です。
一人のオペレーターが1時間に何件の電話を取れるかを適切に計算しているかもポイントです。
計画が適切であれば、不測の事態や欠勤があっても計画との差異は当然のことなので、欠勤率を減らすためには何が必要かを考えます。
しかし、入電予測がきちんと立てられていないと問題が生じます。例えば、100件しか電話が来ないのに200件対応できる体制を整えてしまうと、無駄なコストが発生します。
運用マネジメントとは、目標に対して何が課題なのかを見極めるのがコールセンターのマネジメントです。
このように突き詰めていくとコールセンターというのは非常に面白いですが、マネジメントとして分析等の時間がないと見えてこない世界でもあります。
要素を1つずつ深堀りし、要因分析を突き詰めていくことが求められます。
成果品質と応対品質の“ジレンマ”。
━━━成果品質は、運用マネジメントの徹底で高められることがわかりました。一方、応対品質を向上させるために、コールセンターとしてどのような取り組みを行うべきでしょうか?
取り組みの前に、そもそもの前提について話させてください。
まず、そもそも応対品質がセンター運営においてどの程度重要かがポイントです。応対品質は重要ではない…というのは語弊がありますが、実際、応答率や運用上で最低限の指標がコールセンターの設計において最上段にあるとすると、お客さまへの応対品質は、あくまでプラスアルファの要素かもしれません。
しかし、企業の顔として電話に出るため、最低限の応対品質は必要です。
コールセンターが非常に忙しい場合、応対品質をチェックするリソースが最優先されるかというと、そうではないかもしれません。
KPI達成のための運用マネジメントは重要ですが、応対品質がないとKPIを達成しない。ここにジレンマがあります。
これらの解決策としては、コールセンターでよくあるケースとして、応対品質を外部に委託することがよくあります。
外部からの評価は繁忙期に関係なく、定期的に自社のコールセンターの品質を評価してくれます。
━━━そもそも、なぜコールセンターは応対品質を高めたいのでしょうか?
一番の理由はセンターマネジメントというよりも、企業のブランディングに近いでしょう。
例えば、製品がいかに良くても、問い合わせ窓口の品質が低い時、その商品を使いたいと思うでしょうか?このような時、お客さまとしては気持ちよくはないですよね。
そのため、製品やサービスがよく、また問い合わせ窓口の品質も高いと、お客さまは気持ちよくその企業と付き合うでしょう。
最近では製品やサービスの評価を目的としたNPSなどのサービス指標がありますが、コールセンターにおける品質の高さが企業のブランディングに強く影響するため、コールセンターとしての応対品質指標(満足度評価やトランザクションNPS(T-NPS)など)を持つことは重要だと、WOWOWコミュニケーションズでは考えます。
ただし、前述した通りコールセンターにおいて応対品質が最も重要視されるものではない、というジレンマがあります。
━━━棟方さんにコールセンターのご相談を受ける際、クライアントから「ブランディングを高めるために応対品質を向上させたい」とご相談がくるのか。それとも、「応対品質を高めることで、ブランディングを高めたい」だと、どっちが多いですか?
どちらかというと「応対品質を高めることで、ブランディングを高めたい」が多いです。
コールセンターとしての品質をまず最低限担保し、その積み重ねがブランドブランディングに係る一つの要素になる、といった考えのケースが多いです。
応対品質を高める6つの要素
━━━では改めて、応対品質を向上させるために、コールセンターではどのような取り組みを行っていますか?
満足度評価やT-NPSなど目的が若干ズレたとしても、取り組みとしては音声ログに対して、応対品質が高いか否かの評価をしています。
これはどのコールセンター業者も一緒の手段だと思います。お電話でお客さまとお話ししている音声ログをコールセンターの品質担当者が評価指標に沿って確認します。そして、評価が高いか低いかを判断するのが一般的です。
━━━応対品質の評価手法において、WOWOWコミュニケーションズ独自のやり方はありますか?
冒頭の「第一声が非常に良い『おはようございます』といった挨拶がしっかりしていると、品質が高いと感じられる。」の例え話に戻りますが、WOWOWコミュニケーションズとしては「しっかり話せているから満足度が高い」というだけでは真の顧客満足を生めないと考えます。
そこでWOWOWコミュニケーションズでは“サービスサイエンス”という、サービス品質を分解して評価する方法をとっています。具体的には、6つの要素に分けて評価しています。
- 正確性:時間や金額を正しい数字で説明する・スクリプトやチェックシートを活用する
- 迅速性:お客さまの用件やニーズの理解が早い・平均処理時間が短い
- 柔軟性:権限が現場に委譲されている・お客さまにルールを押しつけない
- 共感性:オウム返しに復唱する・お客さまの主張を肯定する
- 安心感:スキルの高さを感じさせる・矛盾や不明点のない説明をする
- 好印象:お客さまと適度な距離感を持つ・礼儀正しい言葉づかいである
正確性とは、お客さまが求める回答にズレがないことです。時間や金額を正しい数字で説明できるかというのが正確性です。
迅速性は、お客さまの要件やニーズの理解が早く、例えば申し込みが一度で済むことです。「折り返しますね」や「確認します」ではなく、その場でスムーズに対応できるかがポイントです。
そして、非常に重要な柔軟性。これは、お客さまに自社のルールを押し付けないことです。例えば、状況に応じたアドバイスを提供したり、お客さまの状況に合わせた対応をすることです。
急いでいるお客さまには迅速に対応し、不安を感じているお客さまには丁寧に深掘りして説明することが柔軟性に含まれます。
━━━素晴らしい仕組みですが、実際、これは再現性があるんですか?
あります。
正確性、迅速性、柔軟性が高いと、一般的には成果品質も高くなります。例えば、アウトバウンドの場合、購入に繋がるコミュニケーションができているかどうかです。
実際、株式会社JTBコミュニケーションデザイン様では、これらのアプローチを元にロイヤリティを生むコールセンターを確立しています。
━━━なるほど。最後の3つも教えてください。
最後の3つが、共感性、安心感、好印象です。
共感性とは、例えばお客さまの言葉をオウム返しで復唱し、主張を肯定して受け止めることや、要件を要約して理解を示すことです。
安心感は、矛盾や不明点のない説明をすること、お客さまの名前を呼んであげること、応対者がスキルの高さを感じさせることです。お客さまに「この人は初めて電話に出たわけではない」と思わせることが重要です。
好印象とは、お客さまとの適度な距離感を保ち、礼儀正しい言葉遣いをすることです。謙虚で丁寧な対応はもちろんのこと、共感性、安心感、好印象が揃うと、お客さまは「この人の応対は気持ちいい」と感じます。
これらが整っていると、お電話において高品質な会話となり、お客さまの満足度が高まります。
━━━なるほど、この6つを元に評価することで、応対品質を高められると。
加えて、これらの指標は他に使い道が2つあります。
まずは、何はともあれ自社を評価すること。客観的にカルテのようなものを作り、自社の良い点と悪い点を明確にします。これをオペレーターに落とし込むことで、改善点がわかり、第三者機関の品質評価としてセンターの立ち位置が把握できるというメリットがあります。
もう1つの使い道は、ベンチマーク調査です。
自社の内部評価を行った際に、同じ業界の他社と比較することができます。業界のリーダーとされる他社のコールセンターの応対品質と自社の品質の違いを知ることができます。
ベンチマーク調査では、自社と競合他社のコールセンターを同じ指標でミステリーコールの形で評価します。これにより、自社が他の企業と比較して何が優れているか、何が劣っているかがわかります。
基本的に評価は6つの指標に基づきます。コールセンターのトークスクリプトでは、オープニングからクロージングまでの流れがありますが、その各段階で強みと弱みが見えてきます。
例えば、クロージングで共感性が非常に高いと良いコミュニケーションが取れていますが、質問に対して復唱がなければ解決点数が低くなります。オープニングでの良い点と悪い点も明確になります。
他社と比較して共感性が非常に高い場合、それは自社のコールセンターのブランディングになります。共感性が高いことが分かれば、センターだけでなく、自社のサービスやプロモーションにも活かすことができます。
━━━最後に1点質問です。どのコールセンターもコールセンターの品質を高めたいと考えていると思いますが、品質向上を目指す中でよく起こる課題や障壁について教えてください。
まず一番多いのは、応対品質評価を行っただけで終わってしまうパターンです。評価をするだけで、施策に結びつけられていないことがよくあります。
応対品質は面白いもので、例えば評価が5段階で5を取ったとします。しかし、何もしないままで5を維持するのは当然ながら不可能です。
なぜなら、世の中は日々変化するためです。
市場やお客さま、クライアントの商品や競合商品など、常に様々なものが変化します。応対品質評価を行い、そのタイミングにおける客観視することはできますが、時が経つと、評価そのものを時代に合わせて再評価しなければなりません。
そのため、WOWOWコミュニケーションズでは定期的に応対品質を評価することを推奨しています。これにより、品質の高いコールセンターを維持できます。
その際、ぜひ今日お話した6項目を元に、コールセンターの評価をしてみてはいかがでしょうか。
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