解約抑止の手段を考える前にやるべきこと。
【要約】お客さまの満足度を因数分解し、何に満足しているのかを、まずは特定。
解約抑止の手段を考える前にやるべきこと:お客さまの満足度を因数分解し、何に満足しているのかを特定。これにより、ターゲットに合ったコンテンツやコミュニケーション方法を考案可能。例えば、特定の年代やライフスタイル、行動に合わせたメッセージング、コンテンツ、チャネル選定を行うことで、お客さまの継続意向を高められます。(※満足度の因数分解に活用できる参考資料「インサイトの見つけ方」はこちら)
解約の理由と要因:ユーザーが解約する理由として、商品やサービスの不使用などの興味減退、引っ越しやライフステージなどの行動の変化、競合サービスへの移行によるブランドスイッチングなどが挙げられます。
解約予兆の検出方法: 例えば、定期購入の間隔が開く、キャンセルの増加、顧客ステージの移行率の変化などを通じて、解約の予兆を観測します。予兆の観測方法はビジネスモデルによって変わるため、モデルに適したお客さまのステータス把握方法を確立しておくことが重要。
ブランディングと企業イメージ:企業のブランドイメージや想起率が競合に劣ることが解約の要因となることがあります。契約継続意向の定期的な調査を通じて、企業イメージの低下を把握し、競合との差別化を図ることも解約抑止において求められます。
解約抑止の施策:水際での解約抑止はよくある手段ですが、一時的な対策です。根本的には解約させないような日々のコミュニケーションとサービスの見せ方が重要。お客さまとの接点を考察し、適切なコミュニケーション手段と内容で満足度を維持することに注力。
※本編は“WOWCOMポッドキャスト”をテキスト化した内容です。またサムネイル画像およびYouTube内の画像にはDALL·E 3を使用しています。
ポイントは「お客さまとの接点を観察すること」
多くの企業が直面する課題、それはユーザーの解約です。
解約の理由は様々で、お客さまの興味移行、ライフスタイルの変化、そして、競合サービスの台頭による便益の代替など…。しかし、これらの課題には解決策があります。
ポイントは「お客さまとの接点を観察すること」。
「重要なのは、お客さまが満足度が維持されている理由や、満足度が高い方が何に満足しているかという要素を分解すること。」と、長年データマーケティングに携わってきたWOWOWコミュニケーションズの横関さんは説きます。
解約の背景、予兆、そして解約抑止の解決策について解説します。
※関連資料:インサイトの見つけ方
解約抑止の要因と予兆。
━━━そもそもなぜ、ユーザーは解約してしまうのでしょうか?
様々なケースがあります。例えば親会社のWOWOWのようなケースでは、番組を見る時間がなくなってしまうことがあります。
見たい番組が終わってしまったり、引っ越しをしたりする場合です。また、残念ですが、別のサービスを利用することもあります。
他にも、サポートさせていただいているメーカーさんの場合では、引っ越しやライフステージの変化によって仕方なく解約が起こるケースもあります。
また、競合製品の方が利便性が高くなりそちらに変えることもあります。便益の代替、つまり競合製品への切り替えや代替品へのスイッチングです。この場合、サービスやプロダクトの改善が必要となります。
※関連記事:“お客さまの本音”で施策を変えた事例3選
━━━解約抑止の際、理想は「この方は解約しそうだな」と予兆に気づくことだと思います。その際、解約の予兆に気付くためにされてることはありますか?
サービスや利用できるデータによって、予兆に気づけるかどうかは変わってきます。
例えば、先ほどお話したメーカーさんの場合、定期購入の間隔が開き始めたり、キャンセルが出たりすることで気づける場合もあります。
他には、メディア系の企業の場合。事前に企業側で顧客ステージを設け、その移行率で予兆を観測します。ロイヤルに近い方に移行してくれれば良いのですが、逆にステージを下がるパターンもあります。
その移行率が今月は増えたという場合、その利用者が減っていると感じることができます。
また、会社としてのサービスの満足度や現在持たれているイメージがどう変化しているかを調査会社の調査パネルを使って確認するケースもあります。
※関連記事:インサイト活用事例 | メディアとメーカーが持っていた課題とは?
━━━今のイメージの話は面白いですね。つまるところ、これはマーケティングでいうブランディングの領域に近いと思いますが、ブランディングの測定は定量的には非常に難しいと考えます。先程のステージの移行や定期購入の間隔が開いたりキャンセルが起こったりする要因を分析していくと、企業イメージやブランドイメージが関係していることもあるということですか?
そうですね、例えば「マイクといえばどの企業を思い浮かべますか?」という質問で、企業の想起順位が下がっていくことが分かってくると、競合が優位になっている可能性があります。
また、サービス利用者のパネルに対し、契約継続意向を定期的に調査していると、その継続意向が下がってきていることがわかります。
これにより、解約の予兆が見えるかもしれません。
━━━なるほど。例えば、自社のプロダクトの質が下がったり、アクションを怠っていた場合は改善できると思います。しかし、マイクの想起率が下がるということは、自社の努力不足もありますが、競合の企業努力によって負けている可能性もありますね。
※関連記事:【メーカーのLTV構築事例】「自社商品を継続利用してほしい」課題に対する解決例
そもそも、解約させる気を起こさせないことが大事。
━━━メーカー定期購入の間隔が空いたり、メディアのステージが下がったりする要因を、WOWOWコミュニケーションズのプランナーの方が特定しているかと思いますが、その後、どのように解約抑止を図っていますか?
2つあります。
1つは、水際での抑止です。解約したいと言われた時に「いやいや、うちのサービスにはもっとこういう良い点があるんですが知っていましたか?」とリテンションを図る方法です。
しかし、これは付け焼き刃の施策です。
もう1つは、そもそも解約する気を起こさせないようにすることです。
本来であれば、解約する気を起こさせないような日々のコミュニケーションの取り方や、サービスの見せ方を工夫することが重要です。
これらはすぐに結果が出るものではありませんが、地道に努力していくことが大切ではないでしょうか。
━━━2点目は非常に本質的な「そもそも解約させる気を起こさせない」についてですが、具体的にはどのような施策や考え方がありますか?
施策として、MAを使う、ポップアップを出す、FAQを改善する…など、やり方は色々あります。しかし、施策は重要ではありません。それより、お客さまとの接点を観察することが重要です。
重要なのは、お客さまが満足度が維持されている理由や、満足度が高い方が何に満足しているかという要素を分解すること。
その上で、お客さまとの接点におけるコンテンツの内容やコミュニケーションの取り方に気をつけています。
「誰に対して、何をお届けするか」が重要です。
━━━「何をお届けするか」はビジネスモデルによって変わると思いますが「お届けする中身」の品質は、どのように高めていますか?
中身の部分は、満足度が高い理由を紐解いていくことから始まります。
例えば、原澤さんが飲んでいるお茶の満足度が「のどを潤す」だけでなく「血圧が下がる」などの別の用途にも使えることが分かると、満足度が上がり、継続して飲みたくなる…ということがわかったとします。
そうした場合、そのお茶で血圧が下がると感じている人たちの年代や性別、普段のライフスタイルを調べると、例えばウォーキングをしている人たちが多いことが分かってくるかもしれません。
そのような人たちに向けたクリエイティブは、「血圧が下がるよ」とか「ウォーキングした後に飲みましょう」といったメッセージになります。
また世代が上の人たちには、メールよりも別の手段の方が情報として届きやすいかもしれないという考え方も出てきます。
━━━確かに満足度を因数分解して、それに施策を当てるのは、間違ってはいませんが思考が浅はかかもしれません。そこからさらに、セグメント、チャネル、地域、過去の購入履歴、知人のセグメント、家族構成、ひいてはウォーキングといった行動データなどをすべて連携させることで「このセグメントにはこう、このタイミングではこう」といった施策を行い、全体を“Connect to the dots”していくわけですね。
━━━解約抑止のまとめに入ると、まず顧客を分解因子に分け、その因子ごとに、本質的には水際抑止ではなく、そもそも止めたくない、続けて好きだという気持ちをどう起こしていくかが大事だということがよくわかりました。
※関連資料:インサイトの見つけ方
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