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ポジショニング戦略の作り方①:14個の質問

更新日:
ブランド・エクイティーは?"何が"、価値を下げている?家族へどのように説明する?

前回解説した「ポジショニング戦略とは?作り方と気を付けるべき7つのポイント」。

本稿では実際にポジショニング戦略を策定すべく、具体的なステップに入ります。

まずは「どの要素でポジショニングを図るか?」、要素を見つけるべく、下記14つの質問を実施します。

  1. どのようなブランドエクイティーを築きたいか?
  2. そのエクイティーを所有しているのが誰なのか?
  3. 一方で、どんなイメージを持ってほしくないか?
  4. 見込み顧客はどのようなブランドイメージがあるのか?
  5. 見込み顧客にとって購買意思決定を左右する重要な判断軸は何なのか?
  6. 自社ブランドのエクイティーは何で、競合に対して強みと弱みはどのあたりにあるのか?
  7. 現状、他社と比較してどのような特徴が価値あるか?
  8. 自社の価値を何が下げているのか?
  9. なぜ、顧客は自社の価値を下げている事象を選ぶのか?
  10. どの顧客を対象とするか?
  11. どのニーズを満たすのか?
  12. 相対価格をどのように設定すればいいか?
  13. 顧客はブランドに接触した時、各五感でどのように感じ、どのような気持ちになるのか?
  14. 顧客は自社ブランドを家族、友人、同僚、初見の人にどのように説明するのか?

質問の目的は「戦略キャンバスに必要なポジショニング要素を洗い出す」ことです。

実際に「WOWOWコミュニケーションズの”コンタクトセンターサービス”を、どのようにポジションすべきか」を例に、14の質問を実際にやっていきます。

(ただし戦略のキーポイントとなる要素は情報漏洩を防ぐため、実際とは異なる情報を含めています。)

※WOWOWコミュニケーションズのマーケティング事例はこちら

※ポジショニング戦略の作り方シリーズ

1.どのようなブランドエクイティーを築きたいか?

前回でも定義したように、ブランドエクイティーとは「消費者の頭の中にあるブランドに対する一定のイメージのこと」です。

例えばコンタクトセンターでは、下記のようなイメージを持ってほしいケースが多いです。

  • コールの質が高い
  • 社内教育制度の質が高い
  • 様々な業種・業界に対応可

筆者の経験上、下記に留意した上で、築きたいブランドエクイティーをチーム内でブレストするのがおすすめです。

  • まずは担当マーケターが一人で、市場・競合調査なしに直感で仮説を立てる
  • 市場・競合調査をした上で、築くべくブランドエクイティーを考える
  • 事業、プロジェクトメンバー等に”自身の仮説を伝える前に”、「どのようなブランドエクイティーがいいと思いますか?」と所感をもらう
  • 自身の仮説を伝え、差や違いを整える
  • 最後に、一言でまとめる

前回の記事に記載した通り、ブランドエクイティをコントロールすることは不可能です。

とは言え、方向性は必要です。一言で言語化し、チーム全員が共通認識できるブランドエクイティを築きましょう。

2.そのエクイティーを所有しているのが誰なのか?

ブランドエクイティを築いたら、今現在、誰がそのイメージを持っているのか抽出します。

例えばコンタクトセンターの場合、WOWOWコミュニケーションズのサービスを導入して下さっているお客様には「コールの質が高い」といったイメージを持って頂いています。

また、エンターテイメント業界のお客様が多いことから、同業界の方々からも同様のイメージを持って頂いています。

このように、現時点でブランドエクイティーの所持者を抽出していくと「なぜ、想起してほしいイメージを持ってくれているのだろう?」となり、戦略キャンバスを作る上で重要な「ポジショニングの要素」を洗い出せます。

3.一方で、どんなイメージを持ってほしくないか?

繰り返しですが、ブランドエクイティはコントロールできません。故に「本当はそんなことないのに…」と、実態とは異なるマイナスなイメージを植え付けてしまうこともありえます。

消費者の意思は自由なので縛ることはできませんが、チーム内では持ってほしくないイメージについて整理しておきましょう。これによって「やらないこと」が自ずと見えてきます。

例えばコンタクトセンターでは「ただただ、大量のコールをする」といった”パワープレイ”なイメージを持ってほしくはありません。(実際、WOWOWコミュニケーションズではコールの質にこだわったコンタクトセンターを目指しています。)

4.見込み顧客はどのようなブランドイメージがあるのか?

まずは自身・チームで仮説を立てます。

例えばコンタクトセンターの場合「顧客接点のプロフェッショナル?」「エンゲージメント?」といったイメージの仮説が導きだされます。

次に、自社以外の人に「WOWOWコミュニケーションズのコンタクトセンターって、どんなイメージがある?」と聞いてみましょう。必ず、仮説と実態の差が生まれます。

この差が、今後戦略キャンバスを引く時の要素として重要になります。

5.見込み顧客にとって購買意思決定を左右する重要な判断軸は何なのか?

この質問が、戦略キャンバスを作る上で必要な要素を炙り出しやすい質問です。

価格、デザイン、機能性、ブランド、周りが所持している、レビューの数…などなど、購買時の意思決定には何かしらの要素が一つ、または複数関わっています。

例えばコンタクトセンターでは、コールの質、スーパーバイザーの質、KPIの達成具合…などなど、導入時に様々な判断軸があります。

これらの要素を自身およびチームで考え、できる限り洗い出します。

6.自社ブランドのエクイティーは何で、競合に対して強みと弱みはどのあたりにあるのか?

エクイティー。金融観点で日本語に訳すと”株式資本、自己資本”です。

資本を定義すると「事業をするのに必要な基金。もとで。生産の三要素(=土地・資本・労働)の一つ。新たな営利のために使う、過去の労働の生産物。」となります。

例えばコンタクトセンターの場合、これまで様々な業界・業種に対応してきた経験や制度、仕組みといった知的財産があります。

現在もっているエクイティーを整理し、競合と比較します。

7.現状、他社と比較してどのような特徴において価値があるのか?

ここまでの要素を元に「ここだけは自社の価値である」と自信もって言える部分を導き出します。

例えばコンタクトセンターの場合「コールの質を高めるために仕組み化した教育制度」は、他社と比較して特徴であり、お客様にとって価値でもあります。

もし、特徴が見つからなかった場合。

解決策としては、既存ユーザーの方々に聞いてまわりましょう。「なぜ、自社製品・サービスを使っていますか?」と。何十人と聞いて回れば、共通点が見えてきます。

その共通点を、まずは洗練させることが最短距離です。

8.自社の価値を何が下げているのか?

この質問はリスクヘッジの意味合いが強いです。

わかりやすい例として、ここではコンタクトセンターではなく、デジタルカメラを取り上げます。

デジタルカメラは販売当初、軽くて持ち運びやすく、またフィルムを使わないため現像も容易でした。しかし、スマートフォンの普及により「軽い・持ち運びやすい・現像が容易」の価値は押し下げられてしまいました。

つまり、デジタルカメラの価値を下げているのはスマートフォンです。

このように、自社製品・サービスの特徴を凌駕する、または逆をついて価値を下げられている対象を絞り出します。

自社の価値は巻き返せるのか?はたまた、違う価値で勝負した方がいいのか?を整理しましょう。

9.なぜ、顧客は自社の価値を下げている事象を選ぶのか?

さきほどのデジタルカメラの例えに続きますが「顧客はなぜデジタルカメラではなく、スマートフォンを選ぶのか?」を考えます。

「携帯電話の機能もついてお得」「取り出しやすい」「クラウドを活用すれば容量無限」など、様々な要素が見えてくるはずです。

これらの要素に対抗すべきか?別軸で戦うべきか?について検討しましょう。

10.どの顧客を対象とするか?

さて、ここまできたらある程度「戦えそうなエリア」が消去法で見えてきます。むしろ「ここでは勝ち目がない」と、やらないことが見えます。

戦えそうなエリア、つまり、自社の価値で喜ばすことができそうな顧客をここで導き出しましょう。

例えばコンタクトセンターの場合、情報過多の昨今において、コンタクトセンターに来るお問合せの種類は日々増えていきます。一方、サイト上のFAQといった手軽に答えを見つけられる仕組みも増えてきている。

この時重要となるのは、お問合せを捌ける量ではなく、1本1本のお問合せに対する対応力であることもあります。難しい質問のみコンタクトセンターに来るため、そこで求められるのは質です。

故にどちらかと言うと量ではなく質を求めているお客様を対象とする、といった絞り方も可能です。

11.どのニーズを満たすのか?

顧客は様々なニーズを持っています。例えば、コンタクトセンターのテーマ一つとっても、切り口は様々です。

コールの質、研修制度、価格…などなど、ニーズの種類とその熱量は顧客によって変わるでしょう。

“二兎追うものは一兎も得ず”ではないですが、全ニーズを一度に満たせる可能性は低いため、どのニーズに特化するか決めます。

12.相対価格をどのように設定すればいいか?

競合他社と比較し、自社製品・サービスの価格を調整します。もちろん、安いにこしたことはないのですが、利幅も想定しなければいけません。

ここで、ユニバーサルスタジオジャパンをV字回復させたマーケター森岡毅氏の一言を紹介します。

“一流のマーケターは 値上げをしながら、個数も伸ばす”

ポイントはいくらにするかではなく、価値によって初期設定から価格を押し上げつつも個数も増えるためにはどうしたらいいか、を考えることです。

13.顧客はブランドに接触した時、各五感でどのように感じ、どのような気持ちになるのか?

BtoCでもBtoBのビジネスでも、最後は”感情を持った人間”が製品・サービスを判断します。基本的に人間は”視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚”で物事を判断します。

製品・サービスによってどの五感を使うかは異なりますが、各感覚で顧客がどのような感情になるかを想定します。その感情がポジティブであれば購買変容しますし、ネガティブであれば非購買へと進むでしょう。

14.顧客は自社ブランドを家族、友人、同僚、初見の人にどのように説明するのか?

最後に、購買後も考えておきます。

「デザインがいいの!」「お買い得だからおすすめ!」「このブランドは歴史があってね…」と、製品・サービスをどのように紹介しているのかも確認しておきます。

まさしくこのタイミングが「想定したブランドエクイティ」とどれくらい差が生じるのか、確認するタイミングです。

できればコンセプトユーステストなど、製品評価手法を使うのがよいですが、まずは直接の聞き込みを進めるのがいいでしょう。

要素をまとめる

14個の質問を行うことで、戦略キャンバスに使えそうな要素が見つかってきました。

  • コンタクトセンターの質
  • お問合せを捌く量
  • 研修制度
  • 価格
  • 対応力
  • 対応している業界

…etc

これらの重要な要素をもとに、次のステップへ進みます。

ポジショニング戦略の作り方②:その要素、本当に重要?

※フレームワークなどの参照元

この記事を書いた人

原澤 陽

合同会社HARAFUJI Co-Founder COO | 大学在学中の19歳より株式会社ギャプライズにてBtoCデジタルマーケティング、BtoBマーケティング、法人営業に従事。その後、チーターデジタル株式会社にて法人営業を経て、 現在は合同会社HARAFUJIの共同創業者として独立。BtoBマーケティングを中心とした戦略および戦術支援事業に従事している。登壇実績

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