【インサイト抽出準備】アンケート作成時、気をつけていること。
目次
【要約】目的に応じた柔軟な設計と、対象者の特性に合わせた手法が重要
目的に応じた設問構成:アンケートの設問は、プロジェクトの目的に応じて決める。ポイントは、定量的な質問だけでなく、定性的なデータも重要視し、自由記述欄(フリーアンサー)を設けることでお客さまの本音を引き出すこと。
フリーアンサーの設置と回答率: フリーアンサーを取得したい場合は、全体の設問数と回答条件の工夫が必要。例えば、設問の数が多いと回答が下がるため、他の設問をカットしたり、まとめられる設問があれば統合するなどして全体の設問数を減らす。他にも、インセンティブは回答率の向上には有効だが、強化しすぎると回答の質が低下する。質の高い回答を多く得るためには、対象者の特性に合わせた設問設計が重要。
商材特性に基づく手法選択:商材の特性によってアンケートの実施方法を変える。自社会員がいる場合は、メールや郵送でのアプローチが有効。SNSで多くの情報が得られる分野では、SNSを活用し、ユーザー像の仮説を立てた上でアンケートを行う。商材や会員基盤の状況に応じて最適な手法を選択することが大切。
非会員向け調査の注意:注意点は3つ。「サンプル数の確保と、その質。」「メンバーの専門性」「少数精鋭で、連なりのあるアウトプットが出せるか(メリットデメリットあり)」これら3点を意識することで、非会員調査でも効果的なデータを得ることが可能。
※サムネイル画像にはDALL·E 3を使用しています。
インサイト抽出に向けた、アンケートのポイント
アンケートを作成する際に「どうすればお客さまの本音を引き出せるか」と悩むことはありませんか?
目的に合ったアンケートを設計するのは難しく、特にフリーアンサーをうまく活用するには工夫が必要です。
WOWOWコミュニケーションズのマーケティングでは、定量データと定性データの組み合わせで、お客さまの真意を引き出すことを実践してきました。
本稿では、アンケート収集のプロフェッショナルであるWOWOWコミュニケーションズの齋藤さんに「インサイト抽出前の準備」について聞きました。
ポイントは、下記です。
- アンケートの目的に応じて、項目の量と聞き方、またそのバランスを調整
- 必ず自由記述欄(フリーアンサー)を設ける
- 謝礼によって回答率は上がるが、質が下がることに注意
- 会員基盤の有無とビジネス環境によって、取得方法もチャネルも変わる
- アンケート取得プロセスは固定化せず、状況に応じた柔軟性が必要
これらを意識することで、お客さまの率直な声を引き出し、マーケティング戦略に生かせるアンケート作成のコツを掴むことができます。
回答の質と量は、バランスとお客さまの状況を見て調整が必要。
━━━アンケート作成時に、役に立つインサイトを得るために気をつけていることは何ですか?
ポイントは、アンケートの目的に応じて、どの項目を取るかを変えることです。
WOWOWコミュニケーションズのマーケティングでは、定量データと定性データを組み合わせ、お客さまの真意を明らかにすることを軸としています。
アンケートには、例えば「当てはまるものはどれですか?」といった定量的な質問を含めますが、同時に、定性的な意見も必ず収集するようにしています。
そのため、自由記述欄(フリーアンサー)は必ず設けるようにしています。
例えば、満足度を5点満点で評価してもらった後に「なぜ、その点数をつけたのか?」という理由を自由に記入してもらうことが基本です。
※関連資料:“お客さまの本音”で施策を変えた事例3選
━━━フリーアンサーについて、答える側が面倒に感じて書いてくれない印象がありますが、工夫している点はありますか?
フリーアンサーを入れる際は、答えやすい選択式の項目を減らすなど、全体のバランスを意識的に調整しています。
実際にはフリーアンサーに回答してくれる方も多いです。ただ、アンケートの対象者によっては、回答の質が変わることに注意が必要です。
例えば、市場調査を調査会社に依頼すると、フリーアンサーに回答が集まるものの、ポイントや謝礼目的で内容が薄くなる場合があります。
そのため、対象者の特性を理解した上で、フリーアンサーを設けるかどうかを判断することが重要。
例えば、WOWOWの会員様は、サービスへの熱意が高い方が多く、フリーアンサーにも積極的に回答してくれます。
サービスを実際に使用しているユーザーや思い入れがある方にアンケートを送る際は、こちらで選択肢を作ってしまうと回答の幅が狭まってしまうため、フリーアンサーを活用しています。
また、工夫としてインセンティブを提供することもありますが、インセンティブを強化しすぎると、目的がインセンティブに偏り、回答の質が低下することがあります。
そのため、プロジェクトの目的に応じて、質を重視するか、一定の回答数が必要かを見極めながらアンケート項目を調整しています。
※関連記事:インサイトの抽出方法とデータマーケティング施策への活かし方
アンケートの取得プロセスは、ビジネス環境で大きく変わる。
━━━具体的に、フリーアンサーはどのように取得していますか?
方法は状況によって異なり、SNSを利用する場合もあれば、対面やオンラインでインタビューを行うこともあります。基本的には、まず、実態を把握するためにWebアンケートを提案しています。
ポイントは、会員基盤の有無です。
例えばWOWOWの場合、すでに自社の会員様がいらっしゃるので、その方々にアプローチする手段としてメールや郵送などが利用できます。
一方、会員基盤を持たない商材の場合、お客さまを特定できません。この場合、アンケートや市場調査を行うケースもあります。
他にも、自社商品を購入した方にアプローチしづらい業界の場合や、商品特性によってはSNSの方に豊富なデータがある場合もあったりします。
化粧品のようにSNSの情報が新鮮で多い場合、最初にSNSでユーザー像の仮説を立て、その後アンケートで量と数字を確認するという組み合わせの提案をするケースもあります。
ビジネス環境に応じて、最適な手法を選んでいます。
━━━環境やビジネスモデルに応じて、アンケート取得と単純に進めるのではなく、まずSNSで声を拾ってからインタビューを行うなど、プロセスは多様で無限にあるということですね。
そうなんです。
基本的な調査プロセスはありますが、実際は、それだけでは対応しきれないケースが多い。故に、プロジェクト毎で調査方法は様々です。
━━━最終的に「このプロセスで行きましょう」と決める際には、チームで合意を取っているのでしょうか?
2~3人ほどのコンサルタントで談義した上で、決めています。
コンサルタント毎に得意領域や経験してきたプロジェクトが異なるため、対応中のプロジェクトに対し、得意領域および経験の掛け算の元、最終的なプロセスを決めています。
他にも、大量のデータを加工しなければならない場合は、エンジニアに手伝ってもらった上で、プロセスの調整を行うこともあります。
最終的にはコンサルタントのメンバー同士で相談しながら決断し、お客さまに提案し、合意を得たうえで進める…という流れです。
━━━なるほど、プロセスの確定方法もケースバイケースなんですね。
得意領域や経験値以外にも、状況に応じたプロセスの検討もあります。
例えば、時間制約です。
プロセスを順番通りに進めていては、プロジェクトの完了期日に間に合わないこともあるため、セオリーとは異なるやり方に変えることもあります。
様々なシチュエーションの経験を積んだメンバーが揃っているので、どこで気をつけるべきか、どの作業に時間がかかるか…など、アンケートの設計から回収までを多角的に捉え、プロジェクト完了までのプロセスをコントロールしています。
非会員のデータに限らず、プロジェクトに応じたデータと人員配置が重要。
━━━ 一方、会員を持たない、非会員への調査はどうされていますか?会員と非会員に分けて考える際、会員は情報があるため聞きやすいと思いますが、非会員に対してアンケートを実施する際の心構えや注意点はありますか?
重要なのは、サンプル数とその質、ひいては、誰がそれらのデータに対応するかです。
通常、非会員への調査の場合、調査パネルを利用することが多いです。どの調査会社も日本の人口分布に基づいたパネルを持っており、調査テーマに応じて、何件の回答を集めるかを決定します。一般的には、スクリーニング調査を行い、本題に入る前に対象者を絞り込んでいます。
例えば、サッカーについてのアンケートを実施する場合、サッカーに興味のない人に答えてもらっても意味がないため、サッカーを観る人を集めます。これはクライアントの要望に基づいて設計し、対象者を決定します。そして、本調査で必要な回答数を設定します。
このような調査の際、最低でも30サンプルは必要です。例えば、もし3サンプルしか集まらなかった場合、市場規模を測るためのデータとしては信頼性が低く、使えません。
サンプル数は非常に重要な要素で、推定結果に影響します。これはWOWOWコミュニケーションズに限らず、多くの調査マニュアルにも記載されている内容です。そのため、最終的な分析時にも考慮し、必要な人数を設定して調査を設計します。
非会員向けの調査は、計算力の高いメンバーを配置する必要があります。私は会員向けの調査は経験がありますが、非会員向けの調査に関しては、専門のメンバーと相談しながら進めています。
※関連記事:【インサイト抽出準備】アンケート作成時、気をつけていること。
━━━会員向けと非会員向けの調査では、担当するメンバーが異なるのですね。
メンバーごとに得意な領域が異なるため、プロジェクトに応じた人員配置を行っています。
例えば、定量調査や、調査会社に依頼するような市場調査の設計が得意なメンバーがいます。一方で、インタビュー調査や、顧客が話す内容を整理し「このインタビューからこういうことがわかりました」というように、抽象的な情報を具体的にまとめることが得意なメンバーもいます。
数字を元に分析を進めるのが得意なタイプもいれば、抽象的なデータを形にするのが得意なタイプもいます。
分業制か、少数精鋭か。
━━━なぜ、人によって得意なデータ領域が分かれるのでしょうか?
これまでの経験、そして、その人の性格によるものだと考えます。
理想としては、数字にも強く、インタビューにも強ければ最強だと言えるかもしれません。しかし、実際には、すべての領域に強い人というのは稀ですし、特化した方が結果としてお客さまの目的が達成されやすい場合が多いです。
得意領域が分かれる理由としては、まず性格や経験の違いが大きく影響していると思います。
例えば、エンジニアのような領域では、別の会社でデータを整理したり、データベースを作ったりといった経験が必要です。また、正確さや数字に強い人、情報をまとめるのが得意など、合理性に長けた性格による適性もあります。
一方、インタビューから抽象的なアイデアを具体化するのが得意なメンバーもいます。前提、物事の合理性やロジックは理解している上で「この“お客さまの声”から読み取るべきことは何か?」と、数値にしにくいが、ビジネスにとって重要なインサイトを読み解いた経験を詰んでいます。
すべてのメンバーが基礎知識を持っていることは重要ですが、少数精鋭で取り組み、それぞれが得意分野を活かしながら役割を分担することで、成果が出やすいと考えています。
※関連資料:インサイトの見つけ方
━━━一方、少数精鋭であるからこそのデメリットはありますか?
対応できるプロジェクトの件数に限りがあります。
昨今、データ分析において分業制が進んでおり、件数を多くこなせる企業もあります。それにより、各領域に従事するスタッフの負担も軽減され、次のプロセスにスムーズに引き継ぐことができます。また、特定の領域のプロフェッショナルになることができるため、効率的かつ安定した品質を保てるのも、分業制の強みです。
しかし、WOWOWコミュニケーションズのお客さまの中には「分業制の会社に依頼した結果、分業されたチーム毎に出たアウトプット整合性が取れず、異なる結果が出てしまった」という問題を抱えてご相談に来る方もいます。
━━━実際に、WOWOWコミュニケーションズに調査を依頼されてみていかがでしたか?
非常にスムーズでした。
WOWOWコミュニケーションズ以外にも、過去に調査会社へ似たような依頼をしたことがあります。
「WOWOWコミュニケーションズはどのような流れで調査を実施するのだろう?」と、正直不安もあったりしましたね。
初めは一定の情報をお渡しした後、ほぼお任せするような形でお願いしました。
実際にユーザーインタビューするまではお互い初めましてだったこともあり、苦労もありましたが、その後はスムーズに進めてくださったのはよかったです。
またもう一点、良かった点があります。
それは、定量調査と定性調査をワンストップでやってくださったことです。
調査会社によっては定量調査と定性調査の担当チームや部署が、それぞれ別に分かれることがあります。
加えて、それぞれの情報を共有せずに実施するケースもあったりします。
チームや部署どころか、定量調査と定性調査で別々の調査会社でインタビューするパターンもありました…。
別々に調査が進むとアウトプットの質が下がるのはもちろんのこと、弊社としても調査に関する説明を調査会社に何度もしなければならず、工数の側面でもデメリットがあります。一方、WOWOWコミュニケーションズは定量調査と定性調査の両方を一遍にしてくださったので、非常に楽でした。
これに対してWOWOWコミュニケーションズでは、少人数でプロジェクトを最初から最後まで担当するため、各メンバーが全体の流れやクライアントの意図を深く理解できます。
そのため、プロジェクト全体に一貫性があり、クライアントのニーズや調査の背景、ポイントを踏まえた提案が可能です。
少人数で全ての工程を担うことは負担が大きく、担当者にとってしんどい部分もあります。しかし、その過程で得られるインサイトやお客さまとのつながりの強化が、WOWOWコミュニケーションズにおけるデータマーケティングの強みとなります。
ただ、分業制か少数精鋭、どちらが良いのかは一長一短であり、是非は決められません。プロジェクトの目的とゴールに応じた運営方法の選択を推奨します。
※関連資料:インサイトの見つけ方
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