今さら聞けない!マーケティング4.0とは何なのか?
アメリカのマーケティング研究者で、数々のマーケティング理論を発表してきたフィリップ・コトラー教授。
彼はマーケティングに関して多くの理論を提唱していますが、2016年に著書「マーケティング4.0」を発表しました。今回は、この「マーケティング4.0」の具体的な活用例をはじめ、「マーケティング4.0」とはどんなものなのかを詳しく解説します。
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目次
マーケティング1.0、2.0、3.0のおさらいから
マーケティング4.0を理解するために、まずは、その前のマーケティング1.0、2.0、3.0についておさらいしましょう。
マーケティング1.0とは、「どのように商品を売るか」という基本的なセールス手法として、商品中心のマーケティングが推奨されました。不特定多数の消費者に対して、特に商品のベネフィットや売りたいポイントを訴え、マーケティングを行うことに焦点が当てられていました。
続く、マーケティング2.0は、ITの進化によって可能となった細かなセグメンテーションやパーソナライゼーションを用い、ターゲット化されたメッセージ性のあるマーケティング施策の実施を推奨するものです。
不特定多数の大衆に向けたマーケティングではなく、顧客視点で商品のポジショニングを行うことの重要性が語られており、多くの企業は、マーケティング2.0を中心とした施策を行う傾向にあります。
さらに発展したマーケティング3.0の概念では、顧客同士のつながりや、世界をより良い場所にしていこうというようなメッセージ性のあるマーケティングの必要性が語られています。
例えば、ハイブリットカーのマーケティングを1.0の概念で行うと「ガソリンを消費しない」という商品のベネフィット中心になりますが、マーケティング3.0の視点では、「この車を使うと地球を環境汚染から守ることができる」というような志向を訴えるというわけです。
こうした三つのコンセプトは現在も活用できるものですが、時代の流れとともに、さらなる個別化が求められています。そこで、マーケティング3.0の理論を補完する形で登場したのが、マーケティング4.0の理論です。
顧客と“つながる”ことの重要性
テクノロジーが進化するにつれ、消費者はインターネットを通じて企業やブランドとつながりやすくなりました。SNSなどの発展に伴い、見込み客が企業に直接コンタクトできる機会も増えています。
そうした背景から、マーケティングにおいては、マルチチャネルでの施策を検討し、オンライン、オフラインのあらゆる場面で、いかに顧客とつながっていくのかが重要視されています。
顧客と企業とのつながりを深めることは、ただの顧客からファンへ、そしてファンを超えた「応援団体、アンバサダー」へと育て上げる機会を増やし、売上向上につなげる効果的な施策となるのです。
4PやAIDAではなく5A
マーケティング戦略として、4P(製品、価格、流通、販促)やAIDA(注意、関心、欲求、行動)を活用した手法を見たことがある方も多いことでしょう。セールスに至るまでのフレームワークとして、概念がわかりやすく伝わります。
マーケティング4.0においても、5Aという考え方があります。5Aとは、Aware (認知)、 Appeal (訴求)、 Ask (調査)、 Act (行動)、 Advocate (奨励)の5つのステップを指しており、購買におけるそれぞれのプロセスにそって顧客にアプローチし、顧客を理解しながらマーケティングを行うというものです。
5つのステップを繰り返すことで、最終的に顧客からの信用を勝ち取り、ブランドのファンとして他者に推奨してもらうようにつなげていくのです。
データに基づくユーザーエクスペリエンスを
マーケティング4.0の概念では、ユーザーエクスペリエンスを高めていくことがとても大切です。お客様の声を真剣に聞き、ニーズの先にある体感を提供することで顧客とのつながりを深めることができます。では、実際にマーケティング4.0を実践している2社の例を紹介しましょう。
ブランドアンバサダーに育て上げるキャンペーンの実施:レッドブル
オーストリアに本社をおく清涼飲料水メーカー「レッドブル」は、伝統的なマーケティングを行わず、スポーツや音楽といったイベントのスポンサー投資を盛んに行うことで、商品をPRしています。また独自のイベントを世界中で開催し、オンラインとオフラインの境界線を越えた「イベント参加者」を使ったPRを行っていることでも有名です。
なかでも、2016年にレッドブルを通貨として物々交換しながらヨーロッパを旅行する「Red Bull Can You Make It?」というキャンペーンでは、イベント参加者を一ファンからブランドアンバサダーに育て上げ、顧客とつながることを念頭に置かれたイベントとなりました。
顧客とつながることで見えてくることもあり、さらにユーザーエクスペリエンスを最大限にできたという点で、大成功を収めたキャンペーンといえます。
社内の活性化にもつながるサービスの提供:ネスレ日本
スイスに本社を置く大手コーヒーメーカー「ネスレ」では、従来のような缶コーヒーやコーヒーマシーンのマーケティングだけでなく、新たな顧客取り込みの施策が盛んに行われています。
そのひとつが「ネスカフェアンバサダー」の提供です。登録した企業には、無償でコーヒーマシーンが設置され、マシーン用のカートリッジを購入することで、社員はわずか数十円のコストでコーヒーを飲むことができます。
この「ネスカフェアンバサダー」の設置により、商品売り上げにつながるだけでなく、コーヒーマシーンを中心とした社内コミュニケーションの活性化も実現しています。
単純に商品だけをプロモートするのではなく、さらなるユーザーエクスペリエンスを与えた施策であり、提唱したフィリップ・コトラー氏本人にもマーケティング4.0を体現していると評価されています。
マルチチャネルでエンゲージメントを
消費者の志向がさらに細分化されることが予測されるこれからの時代において、さまざまなチャネルでどれだけ顧客と対話し、彼らを理解することができるかが大きな課題となります。
顧客とのつながりを深めることこそが、今後のマーケティングを成功させるカギといえるでしょう。
データマーケティング事例紹介
“データ”が益々重要となる昨今。一歩踏み出してデータマーケティングを導入するには、明確な理由を言語化することが重要です。
こちらでは「なぜ、データマーケティングを導入したのか?」をテーマに、下記の企業にその理由を伺いました。
- 製造販売業界事例 | 株式会社タカギ
- アミューズメント業界事例 | 株式会社BANDAI SPIRITS
- アミューズメント業界事例 | 株式会社バンダイナムコアミューズメント
- メディア業界事例 | 株式会社エフエム東京
データマーケティング導入の背景を、ご参考くださいませ。
参考: