DATA MARKETING
データマーケティング

リテンション率とは?計算式や低下する要因、向上させる方法について

更新日:

マーケティング活動で成果が安定している企業と、成果が安定せず新規顧客の獲得に奔走して疲弊してしまう企業は、リテンション率を見ることでその違いがよく分かります。前者はリテンション率が高く、後者は低い傾向にあるからです。

リテンション率とは、端的に言えば顧客の維持率を示したものです。顧客離れが多い企業は、売り上げを維持するために常に新規顧客を獲得し続けなければなりません。新規顧客の獲得は顧客維持と比べて何倍もの費用と労力がかかるため、企業は疲弊してしまうのです。また、成果が安定しないため効率も悪くなります。本記事では、リテンション率とは何か、その必要性、向上させる方法について解説します。

リテンション率とは

リテンション率とは、文字どおりリテンションを数値化したものです。リテンションとは直訳すると「保持」や「維持」という意味があります。人事でも利用されますが、マーケティング領域では「既存顧客の維持」を表します。リテンション率は既存顧客をどれだけ維持できているかを数値化したものであり、顧客離れの防止や顧客のロイヤルカスタマー化を促すマーケティングを「リテンションマーケティング」と言います。

このリテンションマーケティングを成功させるには、リテンション率の正確な把握が欠かせません。感覚的に顧客の維持ができていると思っても、数字で見ると大幅な流出が見られたという例は珍しくないからです。リテンション率の現状と目標を正確に把握することが、リテンションマーケティングを成功させる近道となります。

リテンションマーケティングが求められる背景

近年、既存顧客を維持する活動であるリテンションマーケティングが重視される傾向にあります。ではなぜ、新規顧客獲得ではなく、既存顧客の維持が重要なのでしょうか。それは、現代においてどの市場も成熟化していることが理由に挙げられます。モノやサービスがあふれ、どの市場も競争が激しくなっています。インターネットの発達で、消費者が簡単に情報収集できるようになり、商品やサービスの比較がしやすくなったことも新規獲得競争が厳しくなった理由のひとつです。そのため、新規顧客の獲得に奔走するのではなく、いかに既存顧客を維持し、顧客満足度を高めてロイヤルカスタマー化を目指すかがマーケティングの成果を決めるようになったと言えます。

また、マーケティングには「1:5の法則」があります。新規顧客の獲得には既存顧客の維持する5倍の労力がかかるという法則です。同じ成果を挙げるために5倍の労力がかかるなら、既存顧客の維持に資源を投下した方がマーケティングの効率が高まります。資源は無限ではありません。特に近年は人材不足が社会問題となっています。人材不足を補うため、企業はより効率的なマーケティング活動に重点を置くようになりました。新規顧客の獲得は、既存顧客対策と比べてコストや労力が大きいため、より効率的に収益を高めることができる既存顧客対策が注目されています。

リテンションマーケティングのメリット

リテンションマーケティングは、既存顧客を維持し、顧客を育ててロイヤルカスタマー化を促す手法です。いかにリピートを促して顧客を定着させるか、いかにアップセルやクロスセル等を通じてロイヤルカスタマーへと成長させるかを模索、実行していきます。リテンションマーケティングには収益拡大に直結するさまざまなメリットがあります。

  • 投資対効果に優れたマーケティング活動ができる
    先にもお伝えしたように、新規顧客の獲得には、既存顧客対策と比べて大きな労力がかかります。これは金額的な負担だけでなく、時間的なコストにおいても同様です。リテンションマーケティングで既存顧客対策に重点を置くことで、同じ成果を低コストで得られます。
  • ロイヤルカスタマーを育成できる
    ロイヤルカスタマーとは、他社製品に流れず自社の商品のファンとなって購入してくれる顧客を指します。リテンションマーケティングによって、既存顧客への定期的なアプローチを続けることでロイヤルカスタマーの育成につながります。ロイヤルカスタマーは企業にとっての資産とも言え、中長期的な安定した売り上げに直結します。

アップセル・クロスセルによる客単価向上が見込める

顧客ロイヤルティが高まれば、リピート率も増加する可能性が高まります。また、アップセルとクロスセルによる、客単価の向上が期待できます。

リテンションマーケティングについては以下もご覧ください。
いま注目される「リテンションマーケティング」とは

リテンション率の計算方法

リテンションマーケティングを成功させるには、リテンション率を正確に把握することが第一歩です。顧客をどの程度維持できているかを知らなければ、向上させる方法も検討できません。感覚に頼るのではなく、数字で顧客の維持率を把握するようにしましょう。

リテンション率の計算式

リテンション率は下記の方法で計算できます。

リテンション率(%)=
(特定期間の終了時の顧客数‐特定期間中に獲得した顧客数)÷期間開始時の顧客数×100

特定期間終了時の顧客数から、特定期間に獲得した顧客数を減算することで、継続顧客の人数が分かります。特定期間には、顧客が自社の商品・サービスを利用する平均的な期間を設定します。自社の商品・サービスの特性によって異なるので、過去の購買履歴や業界標準等を参考にして期間を算出するようにしましょう。

例えば、期間開始時の顧客が100人で、期間中に10人が解約したものの20人の新規顧客を獲得できたとすれば、リテンション率は90%です。

リテンション率(90%)=
((特定期間の終了時の顧客数(110人※)‐特定期間中に獲得した顧客数(20人))÷期間開始時の顧客数(100人)×100

※特定期間の終了時の顧客数(110人)=期間開始時の顧客(100人)‐期間中に解約した顧客(10人)+新規で獲得した顧客(20人)

計算式に落とし込む際、式で用いる顧客数のどの部分が減少しているのか(または伸びているのか)といった原因が把握しやすくなります。結果、リテンション率の改善・向上の施策も検討しやすくなるはずです。数値化して定点観測していくと、問題点にも迅速に気付けるようになるでしょう。

リテンション率が低下する要因

リテンション率を向上させるためには、なぜリテンション率が下がってしまうのかを把握し、その原因を取り除くことが大切です。リテンション率が低下する要因は、「顧客対応の問題」と「商品・サービスの問題」に大別できます。

顧客対応の問題

顧客対応は、リテンション率に直結します。どれほど商品が魅力的であっても、接客に問題があれば顧客は離れてしまいます。特に現代はモノ・サービスがあふれている時代です。商品・サービスの価値だけでなく、それを供給する企業の接客態度も購買を左右する要因となっていることをよく認識することが必要です。

商品・サービスに問題がある

消費者は何らかの問題を解決するために商品・サービスを購入します。購入しても問題を解決できない、つまりその商品・サービスが期待値を下回っていれば不満が発生し、顧客離れを引き起こします。商品・サービスの機能面だけでなく、購入前の説明やアフターフォロー等の提供する価値全体に対して顧客の期待に応えることが必要です。

リテンション率を向上させるには?

リテンション率を向上させるには、リテンション率の低下要因である「顧客対応の問題」と「商品・サービスの問題」を改善して、顧客離れを防止することが最初のステップとなります。これができていなければ、多くの新規顧客を獲得しても、穴があいたバケツに水を入れるように、せっかく獲得した顧客が流出してしまい、マーケティングの成果が安定しません。顧客離れの対策ができたら、次に顧客の満足度を高めて優良顧客へと育てていくアプローチを進めます。他社にスイッチしない、高額な商材の購入率が高いといった優良顧客を増やすことでマーケティングの成果を高めます。

顧客離れの防止

顧客対応と商品・サービスの改善から顧客離れを防止します。

顧客対応の改善

顧客対応を改善するには、個々の接客能力を高める前に、まずサービスプロセスを明確化することが大切です。自社がどのようなプロセスでサービスを提供しているかを可視化することで、各顧客接点でどう接客をすれば満足度が高まるかが見えてくるでしょう。例えば、問い合わせをいただいたときとクレームが発生したときでは、適した接客方法は異なります。サービスプロセスを明確化し、顧客との接触シーンごとに、顧客が自社に何を期待しているかをまず明らかにすることが大切です。そのうえで、研修等を通じて個々の接客能力を高めていきましょう。

商品・サービスの品質改善

商品・サービスが、顧客の期待値を満たしているかをチェックしましょう。まず顧客の期待を実現できる機能とアフターフォロー等の付加価値をチェックします。商品・サービスのコアとなる部分ですので、この点が満たされていなければ顧客は流出します。
次に、使い勝手の検証も必要です。顧客の期待を十分に満たす機能が備わっていても、使いにくかったり、操作が難しかったりすれば顧客は離れます。できるだけ使いやすいシンプルな設計にすること、それが難しければ気軽に相談できる窓口を用意することが大切です。このような商品・サービスの欠点は、自社ではなかなか見えにくい部分でもあります。定期的に顧客にアンケートを取る等して商品・サービスの満足度を調査するようにしましょう。また、クレームが発生した場合は、商品・サービスを改善できる機会と前向きにとらえ、顧客の声に誠実に耳を傾ける姿勢が商品・サービスの品質向上に貢献します。

優良顧客への育成

顧客離れの対策ができたら、顧客を優良化していくためのアプローチ法を考えてみましょう。優良顧客化には「リードナーチャリング」、「購入後のアフターフォロー」、「顧客管理ツールの活用」の3つの視点からアプローチ方法を検討します。

  • リードナーチャリング
    リードナーチャリングとは、「顧客を教育する」という意味があり、商品・サービスの価値や必要性を伝えながら、購入を促していく手法です。このリードナーチャリングは、購入前の見込み客に対して実施されることが多いものの、既存顧客に対してはおろそかになるケースが多いようです。しかし、既存顧客は一度購入してくれた顧客であり、再度購入してくれる可能性が高くなっています。新規顧客と同様に、既存顧客にリードナーチャリングを通じて再購入やクロスセル、アップセルを促すことで、優良顧客化の促進が期待できます。メールマガジンやSNSによる情報発信、既存顧客向けの特別セミナーの開催等、自社の顧客に合ったアプローチ方法を組み立てましょう。

アフターフォローの徹底

購入までは多くのアプローチを実施するものの、購入後は顧客を放置してしまう企業が少なくありません。購入後、顧客は自分の購入判断が正しかったかどうか不安を感じるものです。製品の活用状況や不明点の相談等、アフターフォローを徹底することで満足度向上につなげましょう。アフターフォローは軽視されがちですが、アフターフォローの充実が次の購入の決め手になったり、口コミによる紹介数の増加につながったりするケースも多くあります。

  • 顧客管理ツールの活用
    リードナーチャリングやアフターフォローを効率的に実行するには、適切な顧客管理が欠かせません。ひと口に既存顧客といっても、その要望や購買に至った経緯などはさまざまです。顧客満足度を高めるには要望に合ったアプローチが必要であり、単純に顧客をリスト化するだけでなく、購買経路や購買頻度、購買額等を正確に記録しておくことが重要です。その際、顧客管理ツールを活用するとよいでしょう。ツールを利用して顧客を管理すれば、管理にかかる手間が軽減され管理効率が高まります。顧客の特性も簡単に検索・閲覧できるので、アプローチ方法の立案もしやすく成果も向上します。

リテンション率の向上がマーケティングの成果安定につながる

マーケティングは短期的に成果を出すアプローチも重要です。しかし、中長期的な観点から継続的に成果を出す仕組みを構築することも、業績の安定化に欠かせません。リテンション率を高めることは、中長期的な業績拡大に直結します。顧客が離れている原因を突き止めて対策を立てること、優良顧客化を促進させること、この2つの視点で仕組みを構築すると、リテンション率向上につながります。自社のリテンション率を正確に把握することから始めて、向上させるための対策を立てていきましょう。新規顧客獲得に奔走するマーケティングから脱却でき、マーケティングの成果安定が期待できるでしょう。

メルマガ会員募集中

弊社セミナーや最新記事の情報をお届けいたします。