デシル分析を活用して費用対効果の高いマーケティングを実践しよう
マーケティングを実践するうえで欠かせない「ターゲットの選定」作業。性別や年齢などの人口統計学的属性であるデモグラフィックスや、趣味やライフスタイルなどの心理学的属性をはかるサイコグラフィックスを用いて、ターゲットを明確化するのはもちろんですが、同時に「購買状況」を把握しておくことも大切です。どんなにターゲットにマッチしていたとしても、購買頻度が低い見込み客に多額の予算を費やすのはリスクが高いものです。
まずは、購入者の購買状況を分析して優良顧客を発見する「デシル分析」の手法を取り入れてみましょう。難しい統計学の知識は必要なく、一定のトレーニングで誰でもできるようになります。今回は、デシル分析を行うメリットと、導入時の手順についてお伝えします。
デシル分析とは?
「デシル」とはラテン語で“10等分”を意味する単語。デシル分析とは、過去に自社の商品やサービスを購入した顧客データをもとに、購入金額の高い順に10等分されたグループをつくって分析する手法です。上から順番にデシル1、デシル2、デシル3……、とグループを順番に並べて分析を行います。購入金額ごとのより細かな絞り込みを行うことで、今後の購買予測が行いやすくなり、費用対効果の高いマーケティング施策を立案するのに役立ちます。
類似する「RFM分析」「ABC分析」との違い
デシル分析と類似する方法に「RFM分析」と「ABC分析」があります。それぞれ特徴を理解しながら、デシル分析もあわせて使い分けてみましょう。
RFM分析は、デシル分析よりもさらに詳しく購買状況を分析したいときに使われます。デシル分析では顧客の購買金額のみを分析しますが、RFM分析では「購買日」や「購買頻度」も加えて分析できるため、ターゲットグループへのアプローチ方法の幅が広がるというメリットがあるのです。詳細に分析することで細かい絞り込みができますが、分析因子が増えるため、分析に時間がかかる、難易度が上がるという欠点があります。
ABC分析はとてもシンプルな手法です。デシル分析と同様に購買金額を分析していきますが、抽出されるグループはA、B、Cの3段階のみ。シンプルな分、短時間で分析ができるというメリットがありますが、顧客数が多い場合には、ひとつのグループに属する人数も多くなってしまうため、ターゲット像があいまいになりがちです。購買状況の全体像をつかみたい、といったおおよその分析作業には役立ちますが、マーケティング施策を立案するには、ややばく然とした情報になりやすいといえるでしょう。
デシル分析のメリット
限られた経営資源を有効活用するためにも、より効率的で費用対効果の高いマーケティングを行いたいものです。そのため、重視して取り組むべき顧客を発見するのに便利なのがデシル分析です。
デシル分析によって、全体の購入比率が見える化されることから、どのグループを重視して、どんなマーケティング施策を投下すればよいかといった判断を行いやすくなるでしょう。一般的には、最も購入金額の高いデシル1に多くの予算を配分し、そのほかのグループに対する優先度を下げるといった施策を講じます。その一方で、購入金額が低く人数が多い下位グループに対して、あえて予算を組み、売上の底上げを図るといった戦略も考えられます。また「優良顧客となるデシル1とデシル2に向けてクーポンを配信する」「グループごとにテキスト内容を変えてメールマガジンを発行する」といったマーケティングプランを実行するのもよいでしょう。デシル分析を活用することで、効果的なマーケティングが展開できるようになるはずです。
デシル分析の手順
デシル分析が活用しやすい理由のひとつに、誰でも簡単に実践できるという点が挙げられます。特別なツールは必要なく、Excelなどの表計算ソフトがあれば分析が可能です。
デシル分析の3ステップ
では、実際にデシル分析を試してみましょう。その方法は、以下の3ステップで表すことができます。
- 全顧客、もしくは分析したい顧客層の購買データを用意
- データを購買金額の高い順番に並べ替え、上位から10等分する(10グループに分ける:100人を対象とする場合、10人ごとの10グループ)
- 各グループの売上構成比を算出
以上の簡単な作業で、データ化が完了です。分析作業を担当していない人でも、やり方さえわかればすぐにでも実践できます。
ただし、元データとなる購買情報については、ある程度、事前に絞り込んでおくのがおすすめです。対象となる期間が長すぎると、過去に一度だけ高額購入して、その後の再購入がない顧客が上位グループに入ってしまう可能性があります。また、通常は10等分するのがデシル分析ですが、商品やサービス内容によっては、3等分や5等分というように柔軟にグループ分けしてもかまいません。
デシル分析で優良顧客にアプローチしよう
マーケティングにおいて知られる「80:20の法則」では、2割の優良顧客が8割の売上を占めているとされてます。売上アップを目指すためには、こうした優良顧客を見定めながら、マーケティング施策を展開しなければいけません。デシル分析には、優良顧客層を明確化するとともに、誰もが手軽に分析できるというメリットがあります。デシル分析を取り入れて、よりよいマーケティング施策を考えてみましょう。
参考: