デジタルマーケティングにおけるアトリビューションモデルとは?
マーケティング業務を遂行するにあたり、ROI(投資利益率)は重視すべき数字です。その結果を把握するためには、広告ツールに備わったROI分析機能を利用すれば、手間もかからず簡単に状況を確認できるでしょう。しかし、場合によっては、ツール内で分析された数字に大きな誤差が出る可能性があるということをご存じでしょうか?
こうした誤差を少しでも減らすために役立つのが「アトリビューションモデル」と呼ばれる手法です。今回は、アトリビューションモデルについて理解するとともに、そもそもなぜ分析結果に誤差が出るのかという点についても掘り下げてみましょう。
目次
アトリビューションモデルとは?
アトリビューションは、日本語で「間接効果」と訳されるものです。お客様が購入するに至った際の「購買行動」すべてのチャネルを分析し、それぞれのチャネルの「購入に対する貢献度」を分析することをアトリビューションモデルと言います。
アトリビューションを使うべきシーンとは?
冒頭で述べたように、ツールごとのROI計算で得た数値をそのまま使ってしまうと誤差が出てしまいます。なぜ、そのようなことが起きてしまうのでしょうか。一例を挙げてみてみましょう。
ある1人のお客様がFacebookに掲載した広告(FB広告)をクリックして企業サイトへ来たとしましょう。そこでは、お客様は購入まで至らず、Webサイトを閉じてしまいました。数日後、Googleに掲載された広告(Google広告)から、再度サイトを訪れたお客様は、サイトを閲覧したあと商品購入へと至りました。
この場合、Google広告では「購入顧客」としてカウントされます。しかし、Facebookの方にも、以前に広告からお客様がサイトへたどり着いたという情報が残っていることから、再度「購入顧客」としてカウントされてしまいます。つまり、GoogleとFacebookの両方で同じお客様の購入がカウントされていることになります。
こうした場合、購入価格は変わらないのにもかかわらず、FacebookとGoogleの2つのツールで同じくROIが計算されてしまい、最終的なROI数値に誤差が出てしまうというわけです。
購入に至るまでのマーケティングチャネルが1つ以上ある場合、それぞれのツールでROIを計るだけでは数字に誤差が出てしまいます。そんな時、アトリビューションモデルを導入すれば、正確なROIを計算した有効的な数字を確認できます。
アトリビューションモデルの種類とは?
アトリビューションモデルを導入するにあたり、無料で比較的簡単に利用できるツールのひとつとしてGoogle Analyticsがあります。
Google Analyticsには、もともと設定されているサンプルアトリビューションモデルが存在し、初心者でも簡単に導入できます。キャンペーンごとのアトリビューションを計測したいといった要望がある場合は、UTMパラメータやカスタムディメンションを追加する必要があるため、やや複雑です。しかし、中小企業の場合、そこまで細かな設定を行わなくても、Google Analyticsにあらかじめ設定されているアトリビューションモデルで十分な結果を得られるでしょう。以下に、Google Analyticsに設定されているアトリビューションモデルの代表する4つを紹介します。
終点と起点(Last Click/ First Click)
終点モデルは、Google Analyticsでデフォルト設定されている基本的なモデルです。このモデルではお客様が購入する前、「最後に接点を持った」チャネルだけが貢献したことになります。先ほど述べた例えを用いると、お客様が最後にクリックしたGoogle広告が貢献したということです。
終点モデルと真逆のモデルが起点モデルです。こちらでは、「最初に接点を持った」チャネルが貢献したことになります。
終点と起点のモデルでは、アトリビューションモデルを使わない場合の「複数のチャネルで計算してしまう」という問題が解決できます。しかし、「初めの接点・最後の接点」どちらかが100%貢献したという計算では、必ずしも正確なデータとはいえず、やや課題が残るでしょう。
線形(Linear)
線形モデルは、お客様が購入にたどり着くまでに接点を持ったすべてのチャネルに平等に貢献度を振り分けるというものです。例えば、お客様がFB広告、インスタグラム広告、Google広告、ディスプレイ広告という4種類の接点を経て1万円分の商品を購入したとします。すると、線形モデルは4種類の広告それぞれに2,500円ずつの貢献度を振り分けます。
線形モデルは、終点と起点のモデルに比べてはるかに正確性が高まるでしょう。しかし、貢献度を平等に分けてしまう点にデメリットがあります。購入という結果だけが計算され、広告からのサイト滞在時間を加味しない数値になってしまうからです。
仮に、お客様がFB広告をクリックしたとき、広告の先のランディングページの内容に興味を持って10分以上もサイト内を閲覧したとします。その際は購入まで至りませんでしたが、数日後に同じ企業のインスタグラム広告を同じお客様がクリックし、10秒もせずランディングページを閉じてしまったとします。最終的にそのお客様はGoogle広告から再度サイトにたどり着き購入へと至りました。この場合、本来であれば、インスタグラムやGoogle広告よりも、最も企業に対する好印象を与えたFB広告に多くの貢献度が振り分けられるべきでしょう。しかし、線形モデルでは、そうした配分は行われず、すべてのチャネルに平等に貢献度が振り分けられてしまいます。
減衰(Time Decay)
減衰モデルは、お客様が購入に至るまでの過程を時間軸で分析し、購入直前のマーケティングチャネルが最大に貢献したと考えます。「FB広告→インスタグラム広告→Google広告→ディスプレイ広告」という4種類の接点を経て購入に至ったお客様の場合、購入直前にクリックしたディスプレイ広告に45%、Google広告に30%、インスタグラムに15%、Facebookに10%というような割り当てで計算されます。これらのパーセンテージは、Google Analyticsがさまざまな要素をもとに算出するものです。
終点、起点、線形に比べると、全体像がわかりやすいというメリットがありますが、ほかのあらゆる要素を無視して購入直前の接点に最大の貢献度を与える価値があるかどうかということは懸念点です。線形モデルの際に用いたFB広告、インスタグラム広告、Google広告の例で考えてみると、本来であればお客様に企業に対する興味を与えたFB広告が貢献したと考えるべきですが、衰退モデルだとFB広告の貢献度が1番低くなってしまいます。確かに、購入直前のチャネルが何らかの貢献をしていることは否定できません。しかし、その割合が正確かどうかについては、企業内で判断する必要があるでしょう。
接点ベース(Position Based)
接点ベースでは、起点と終点にそれぞれ40%の貢献度が振り分けられ、残りの20%をその間に存在する接点に均等に分け与えるモデルです。上述したような「FB広告→インスタグラム広告→Google広告→ディスプレイ広告」という4種類の接点があった場合、Facebookとディスプレイに40%、インスタグラムとGoogleに10%ずつ貢献度が振り分けられます。
このモデルもほかのモデルと同様、ページ滞在時間などを考慮せずに貢献度を振り分けてしまうというマイナスポイントがあります。しかし、一般的に、お客様の購買行動を把握するうえで「お客様が初めてブランドのことを知ったときと、「購入直前」が重要視されます。よって、その2つに貢献度を高く振り分ける接点ベースは、ここで紹介したモデルのなかで最も正確性が高いといえるでしょう。
まずは導入を検討してみよう
アトリビューションツールが利用できる環境にない、または独自の設定で自社特有のアトリビューションモデルを作成できない場合には、簡易的に無料でスタートできるGoogle Analyticsのツールを利用してみるところから始めるのもよいでしょう。それぞれのモデルを使う際の注意点を念頭に置きつつ、より正確なROI数値を導いてください。